皇宮警察が隠蔽した「中国人皇居侵入事件」 1時間にわたって皇居内を自由に徘徊

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「見せる警戒」を強調

 また視察者へのアピールとして、しきりに「見せる警戒」を強調していたというのだ。

〈わざと視察者の目に触れるように警ら等の活動を見せて頂けますようお願いします。例として、(中略)警報機鳴動を想定した駆け付け(やらせと思わせないよう、真剣に。赤灯を付けて車載マイクで警告したり。)〉

 等々、要求実現のための身も蓋もない文言が並ぶのだが、これらの文書作成に関与していたのが、冒頭でも触れた池田警務課調査官であった。

「手荷物検査など、普段は1人で対応しているところを当日だけ2人つけたり、わざとらしく視察官の背後をパトロールしたりと、アピールに余念がありませんでした。幹部は文書の指示通り、部下たちに『そこに立っていろ』『そこを通ってみろ』などと、不自然な指示をそれとなく出さなければならなかったのです」(同)

 結果、涙ぐましい努力の甲斐あって増員に成功したというのだ――。

増員の必要性は?

 むろん、これは勤務実態の隠蔽(いんぺい)および改ざんに他ならない。行政法が専門の早川和宏・東洋大学教授に聞くと、

「皇宮警察本部の定員の管理については『警察庁の定員に関する規則』で定められています。この視察から2カ月後の令和2(2020)年3月末の規則改正では、それまでの定員962人から972人に増えている。定員を増やす際には“忙しくて人が足りない”という事実に基づいて規則を改正することになりますが、この事実の部分が異なるのであれば、その改正に根拠がなかったことになり、大きな問題だと思います」

 さらに続けて、

「その視察が増員の前提になっていたのであれば、改正の根拠が根本から崩れることになり、政策決定として正しかったのかという疑問が生じます。増員した人員をどう配置したかはさておき、元をただせば国民の税金である人件費を、こうした形で増やすというのは由々しき事態。皇宮警察本部は、増員の必要性についての説明をしっかりすべきでしょう」

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