「肉より魚、大豆」派は短命? 加齢臭に効く食品は? プロが明かす60代以降の食事術
刺身より焼き魚
肉と魚に関してはどちらが良いというのはなく、バランス良くどちらも食べたほうがいいと思います。なぜなら同じたんぱく質でもそれぞれ“特色”があるからです。
例えば、肉をよく食べる人と、肉の代わりに魚や卵、大豆製品を食べている人を比べると、前者のほうが血中のアルブミン値が高い、というデータがあります。アルブミンは血漿(けっしょう)たんぱく質の一つで、アミノ酸、遊離脂肪酸、ホルモンなどと結合して、これらを体の組織へ運ぶ働きをしています。東京都健康長寿医療センターは、血液中のアルブミン値が低い人は、そうでない人に比べて短命の傾向があり、認知症の前段階である認知機能の低下を引き起こすリスクが2倍になる、との研究結果を報告しています。つまり、肉をあまり食べない生活を送っていてアルブミン値が低下すると、認知症のリスクが上がる可能性があるのです。
だからといって、肉ばかり食べるのがいいわけではありません。もちろん魚にも良い部分はたくさんある。例えば、サケやイサキやマガレイなどの魚に豊富に含まれているビタミンDについて、国立がん研究センターは次のような興味深い報告をしています。血中のビタミンD濃度が上昇すると、大腸がんや肺がんに罹患するリスクが低下する傾向があるというのです。特に肝臓がんに関しては、明らかにリスクが低下した、と報告されています。
魚の調理法によっても、“健康効果”には差が出てきます。魚料理で最も栄養を効率よく取れるのは、刺身だといわれています。しかし私は、骨粗鬆(こつそしょう)症予防の観点から、刺身よりも骨付きの焼き魚か煮魚にすることをおすすめしています。なぜなら、骨付きのまま調理することで骨から身の部分にカルシウムが溶け出すからです。焼き魚の場合、皮付きのまま調理し、レモン汁やカボス汁などをかけることにより、皮に多く含まれている亜鉛や鉄などのミネラルも摂取しやすくなるのでおすすめです。
ポリアミンという物質に注目
肉と魚だけではなく、熟成したチーズや豆類、納豆に関しても注目すべきものがあります。近年、これらに含まれるポリアミンという物質に注目が集まっているのです。これは細胞の成長や増殖にかかわっている物質で、その量が、私たちの病気発症や寿命の長さに大きな影響を与えているというのです。私たちが体内でポリアミンを作る能力や体内のポリアミン濃度は、18~20歳をピークに徐々に低下していくことが分かっています。つまり、ポリアミン産生能力の低下こそが「老化のスタート」であり、ポリアミン濃度を高いレベルで維持できれば、老化、病気のリスクを下げられるわけです。
肉、魚、大豆製品、乳製品……。食が細くなってしまい、こうした食品でうまくたんぱく質が取れなくなってきた高齢者には、プロテインを使う手もなくはないでしょう。ただ、私はプロテインと謳っている商品だけではなく、たんぱく質以外にビタミンや糖質などもバランス良く取ることができる栄養補助飲料(濃厚流動食)のほうをおすすめします。私の母は今80代なのですが、やはり肉を食べているとすぐにお腹いっぱいになると言います。そういう時に「飲んだほうがいいよ」と栄養補助飲料を勧めています。
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