突然「浮気」にハマり最大5股 アラフォー夫の目を覚まさせた、妻の“習いごと”

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ふと訪れた「浮気」の機会

 それなのに、だ。息子が小学校に上がったあたりから、浩也さんの心に変化が生じた。

「僕、女性は柊子しか知らないんですよ。40歳を前にして、男としてどうなんだろうと思い始めて。家庭も仕事も落ち着いていたから、そんな余計なことを考えるようになったのかもしれませんが」

 仕事は相変わらず多忙だった。出張も接待も多かった。だが週末は接待ゴルフなどにも絶対に行かなかった。家族と過ごす日は頑なに守り続けたのだ。

「土曜日は柊子がいろいろ習い事をしていたので、僕と息子がふたりきりで遊ぶ日。キャッチボールをしたりサッカーのまねごとをしたり。自転車に乗る訓練もしました。天気がよければずっと外で遊んでいた。地元の他の子どもたちも一緒になることがあり、きょうだいのいない息子には、年上の子どもたちとのケンカもいい影響があったと思います。僕はそういうときはケガをしそうにない限り、ただ見守っているだけでした」

 幸せだなあと思いながらも、その幸せに没入する恐怖もあった。「男としてどうなのか」は、常に頭の中を去来していたという。心が恋を求めていたのだと浩也さんはひとりごとのようにつぶやいた。

 そんな心境だから恋が忍び込んできたのか、あるいは深層心理で彼が恋を呼び込んだのか……。そのころときどき、彼はひとりで飲みに行くようになっていた。家に戻る前にほんの一杯、気持ちを切り替える時間が必要だったのだ。

「たまたま入ったバーで気になった女性がいたんです。そんなことをしたこともないのに、その女性にカウンターのこちら側から一杯ごちそうするとバーテンダーに伝えてもらいました。彼女はそれを受け、黙礼して一口飲むと僕のほうにやってきて隣に座ったんです。映画でも観ているかのようでした」

 名前も仕事もわからない。お互いに男と女であることしか情報がない中、ふたりは会話を楽しんだ。読んだ本や映画の話題が中心だった。互いの背景がわからなくても、どんな本や映画が好きか、それについて話すことで気が合うかどうかはわかる。彼にとっては初めての経験だったが、話しているうちに中国語で本を読んだことが会話の中でわかってしまうと、彼女は目を輝かせた。

「私、北京の大学に留学したことがある、と。似たような仕事なのか、あるいは研究者なのか先生なのか。とにかく共通の話題ができると急に親しみが増しましたね」

 暗黙の了解ができあがる。店を出てホテルへ行った。帰り際、一緒にタクシーに乗って彼女がここでいいというところまで送った。彼女の家がその近くかどうかはわからない。

「またね、と言っただけで連絡先も交換しなかった。彼女はカオルと名乗りましたが、本名かどうかもわからない。後腐れのない関係ってこういうことを言うのかと少し感動したのを覚えています」

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