野球選手の妻たちが明かす「勝負レシピ」 疲労回復に効く「特製豚汁」、勝率が上がる秘伝のおかずのレシピとは
「あなたは“彼の食事係”じゃないのよ!」
結婚2年後の2002年に所属していたヤクルトからメジャーリーグに挑戦。渡米後、彩子さんはメジャーリーガーの妻たちと話して驚いた。料理を作ることにまるで関心がないからだ。
「妻の役割は試合を見に行って応援すること。あなたは“彼の食事係”じゃないのよ!」
「栄養はどうするの?」
と彩子さんが聞くと、
「料理人を雇いなさい」
ハッとして視野が広がり、自分の立ち位置が定まった気がした。料理を誰かに任せることはしない。でも、
「試合で勝っても負けても、彼が家の玄関を開けた時、温かい空気が流れているようにしよう」
と、心に決めたのだ。
例えば試合を終えて帰ってきたら炊きたての白米で出迎える。玄米などの方が栄養価が高いのはわかっているが、熱々の白飯の方が夫が喜ぶからだ。
遠征先では肉食中心なので、家では魚を出したところ、寂しそうな表情で、
「一枚でいいからお肉を焼いてもらえないですか~」
と言うので、以来、魚と肉の両方にした。魚も骨が苦手なので、「子どもか!」と苦笑しながらも、彩子さんが骨を取ったり、青魚の刺身を食卓に並べたりした。
死守した料理の基本
揚げ物も、新しい油で揚げたてを出した。定番はレンコンはさみ揚げ。
豚のひき肉(赤身)にごま油を大さじ1杯とネギのみじん切り、ショウガ、酒、醤油を適量入れ、輪切りレンコンではさむ。ポイントは、片栗粉をまぶす前に衣を溶く水に氷を入れて冷やしておくこと。するとカリッと揚がり香ばしい。
「これを登板前日によく作りましたが、振り返ると勝率が高かったかも」
体の疲れを取るのに、酸っぱいものがいいのもわかっていたが、あまり食指が動かないようだった。
「結局、彼が喜ぶものを食べさせたい、ということに落ち着いていきましたね」
ただ、死守した料理の基本がある。「まごわやさしい」。まめ類、ごま、わかめなど海藻類、やさい類、さかな類、椎茸などきのこ類、いも類をバランス良く食べさせるようにした。
木佐流「野菜スープ」
遠征が続くと野菜不足になるので、木佐流「野菜スープ」が活躍した。
きのこ類、ズッキーニ、カリフラワー、アスパラガス、ナス、インゲン、タマネギ、大根など約12種類の野菜を入れ、ベーコンも加えて、塩・こしょうすれば完成。のちに両親の介護食にしたほど、おいしくて栄養価が高い料理だ。
いま、石井監督はGMも兼務する。運動量が減ったので食事量をもっと減らしたいが、躊躇するという。
「寝言がGMの会議の時の話だったり、ベンチでのコーチ陣とのやりとりだったり。普段はグーグー寝てるんですけど、ストレスをためているのかなって。そういう姿をみると細かいこと言うのも悪いなと思って」
石井さんは結婚後、選手としてはケガや故障が少なかった。それは恵まれていたと彩子さんも言う。しかし、大きなケガをした場合はストイックさを求められることになる。
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