井上康生は「コンビニ」で何を買う? レジェンド柔道家が選ぶ3つの商品
サラダチキンの衝撃
渡辺:今回の対談にあたって「好きなコンビニ商品」をご持参いただくようにお願いしていたのですが、康生さんはどのような商品を選ばれたのでしょうか。
井上:いずれもローソンの商品で「サラダチキン スモーク」、「有機栽培の干し芋」、「ひとくちマンゴー」です。
渡辺:実にアスリートらしいチョイスですね。
井上:いやいや、単純に好きなだけですよ。
渡辺:そんなことありません。実は今回の商品、事前に康生さんから窺っていたので、岡田先生にも情報を共有したところ、次のようなコメントが届きました。「サラダチキン:超絶忙しい監督でも、たんぱく質摂取を欠かさないあたりはさすが」、「有機栽培の干し芋:優秀な炭水化物。糖質制限ダイエットという頭の悪い食事法に惑わされず、きちんとトレーニングして健康を保つ食事法を実践している」、「ひとくちマンゴー:ビタミンE、ビタミンB6、ビタミンA、ビタミンC、ナイアシンなどが豊富で素晴らしい。あと“宮崎愛”を感じる」とのことです。まぁ、ローソンのマンゴーは康生さんの故郷の宮崎産ではなく、タイ産ですけどね。
井上:岡田先生に伝えておいてください。「知らんがな」と(笑)。
渡辺:でも「好きなだけ」とは言いつつも、栄養にも気を遣ってますよね?
井上:そうですね。バランスのいいものを選ぶ習慣は身についているかもしれません。食品を購入する際は、パッケージ裏の成分表を見るのが癖になっていますから。ついついカロリー、たんぱく質、糖質などをチェックしてしまいます。
渡辺:その「バランスのいいもの」が、コンビニでも手に入る時代になっているわけです。かつては「食事はコンビニばかり」なんて言ったら、「不健康な食生活の人」という印象がありました。しかし、近年のコンビニは健康意識の高い商品を数多く取り揃えています。これはアスリートにとっても大きいのではないでしょうか。
井上:たしかに「サラダチキン」の存在を知ったときは「すごいものが発明された!」と思いました。
渡辺:「サラダチキン」という商品自体は2000年代から存在していましたが、ブームの火付け役は間違いなく2010年代に販売を開始したコンビニだと思います。「サラダチキン」の大ヒットを受けて、いまなおコンビニでは高たんぱく質ブームが続いています。
井上:それまで日々の生活のなかで、たんぱく質が強調される場面ってほとんどなかったと思うんですよ。でも、今はコンビニでもスーパーでもたんぱく質の豊富さを謳った商品が多く出てますよね。それらを目にする度に「変わったな」と実感します。
渡辺:コンビニ業界に限った話ではありませんが、食品は日々進化しています。
井上:日本人の健康寿命を伸ばした一因として、僕は「慎ましい食生活」が挙げられると思っています。今後、食品がさまざまな発展を遂げていくなかで、それらの食品が従来の日本人の食生活とイコールになるか…という点は課題になるかもしれません。近年はヴィーガンをはじめとした食の多様化について耳にする機会も増えましたし、選択の幅も広がっていますよね。
渡辺:大豆などを用いた代替肉が話題になっていますが、あと数年もすれば「物珍しい食品」ではなく、普通に「食の選択肢のひとつ」として定着する可能性は高いでしょう。その際、普及の追い風としてコンビニが一役買うかもしれません。
井上:つくづく便利だし、本当にスゴイですよね、コンビニって。
渡辺:コンビニは「贅沢の象徴」という側面もあるので、“消費者をだらけさせてしまう店”でもありますけどね。
井上:それは否めませんね(笑)。
(取材・構成/松本晋平)
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