埼玉県議会で自民がLGBT条例案 実は「反対87%」パブコメ結果を完全無視の内幕

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「(パブコメ結果を公表せず)理解が進んでいないから条例が必要だ」とうそぶく県議

 寄せられたパブコメでは、条例の「不当な差別的取扱い」の表記について、「対象とされる範囲が不明確で、憲法で保障される表現の自由を侵害する恐れがある」との懸念が出されたほか、「女性であると性自認している戸籍上の男性が、更衣室などの女性用スペースに入ることを禁じるのは条例違反か」などの疑問も提示された。

 これについては、「条例案は具体的な施策の内容を規定するものではなく、県の施策の基本方針を明示するもの」とし、「(何が不当な差別的取扱に当たるかは)県が具体的な施策を実施する中で示される」と説明している。これについては、県議からも「県に丸投げで良いのか。条例案を作った側の明確な見解が必要ではないか」と危惧する声が出ているという。

 ところで、自民党埼玉県連がネット上で意見を募集したのは今年4月1日から5月2日の約1カ月間。案内文には「多くの県民の皆様のご意見を反映するため、下記の通り県民コメントを募集いたします」と記されたが、寄せられた意見の数や内訳などの一切が秘匿されたままだ。

 今回の条例案策定に関与した県議は「これまでにもこうした意見募集は行ったが、結果を公表したことはない。今後も公表の予定はない」と一蹴。さらに、「(反対が多い)パブコメの結果によって、この問題に対する理解が進んでいないことがわかった。条例制定の必要性がはっきりした」と言明している。

 これについて、ある県議の後援者は「意見募集の文面には、『意見を考慮して条例案を策定する』とまで書かれており、意見を出した人の多くは、その結果を知りたいはずだ。これでは、自分たちに都合の悪い結果が出たから発表しないと思われても仕方ない」と訝る。

元議長は国の「LGBT法」に慎重な国会議員を「差別主義」

 今回の埼玉県議会に提出される条例案については、国のLGBT法制定に向けた動きとの関連も指摘される。

 立憲民主党や共産党などは平成28(2016)年に「LGBT差別解消法案」を国会に提出した。法案は「(性的少数者が)日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものの除去」を目指すものだった。

 これに対し自民党も、令和3(2021)年、稲田朋美衆院議員を委員長(当時)とする「性的指向・性自認に関する特命委員会」が、独自に「LGBT理解増進法案」をまとめた。

 稲田氏は野党との合意を取り付けるため、立憲民主党などの求めに妥協する形で、超党派の「LGBTに関する課題を考える議員連盟」において、法案の「目的」などに「性的指向及び性自認を理由とする差別は許されない」との文言を入れることで合意した。

 稲田氏にとっては自信を持って合意した内容だったが、自民党内では、「差別」という曖昧な定義を根拠にした訴訟が乱発する懸念があるとの指摘や、「性自認」の文言自体に異論が出たため「党三役預かり」となり、通常国会への法案提出が見送られた経緯がある。

 今回の埼玉県議会自民会派の条例案も、第4条に「性的指向及び性自認を理由とする不当な差別は許されない」と明記しており、昨年のこうした稲田氏らの動きと軌を一にしているとの見方もある。

 県連関係者によると、今回の条例案策定を主導したのは国政進出を目指しているという元議長の田村琢実県議で、昨年7月に「稲田朋美 埼玉後援会」を立ち上げ、自ら代表に収まっている。

 田村県議は、昨年5月に自民党の理解増進法案の提出が見送られた際、自身のブログでこう怒りを表した。

《選択的夫婦別姓問題と酷似するLGBTQへの理解不足が生む現状に、吐き気すら感じる》《裁判が乱立することを念頭に置く方は、「差別しますよ」と言っているようなもの》《他人の人権を侵害していることに気付かない保守を自称する政治家達。早く自分の「差別主義」に気付き、多様性を認める寛容な社会づくりを目指して欲しい》――。

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