“パワハラ賞状”で自殺社員を愚弄 内容を精査すると益々浮き彫りになる“悪質性”

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 4年前に自殺した夫のため、遺族の妻が訴訟に踏み切った。上司からは《おまえバカか?》《相変わらずダメポンだな!》といったメールが送られた挙げ句、新年会では《貴方は、今まで大した成績を残さず、あーあって感じ》などと記された賞状ならぬ「症状」を手渡され、そのひと月後に男性は自殺した。こんな会社があるなんて……。

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 6月20日、パワハラや長時間労働が男性社員の自殺につながったとして、遺族は勤務先だった住宅建築会社の株式会社ハシモトホーム(本社・青森県八戸市)と同社の橋本吉徳社長に対し、約8000万円の損害補償を求め、青森地裁に提訴した。

 遺族側によると、男性は2011年の入社で、注文住宅の営業を担当していた。上司の男性課長からは、携帯電話で《おまえバカか?》といった内容のショートメールが複数回送られ、関連会社も参加した18年1月の新年会で、課長が作った「症状」を渡された。

《症状 第三位 ○○○殿/貴方は、今まで大した成績を残さず、/あーあって感じ/でしたが、ここ細菌は前職の事務職で大成功した職歴を生かし、/現在でも変わらず/事務的営業を貫き/悪気はないがお客さまにも機械的な対応にも関わらず、/見事おったまげーの三位です。/影で努力し、あまり頑張っていないように見えて、やはり頑張ってない様ですが……(後略)》

 課長が企画し、文面も考案したという。

 男性は翌2月、青森市の自宅に駐車していた自家用車内で自殺した。青森労働基準監督署は20年12月、上司のパワハラで重度のうつ病を発症し、自殺の原因となったとして労災認定している。発症前1カ月の時間外労働時間は76時間9分で、過労死ラインに近かったという。遺族側は昨年末からハシモトホームとの交渉に入ったが、それも決裂したという。そこで提訴に踏み切ったのだ。いったい、ハシモトホームとはどんな会社なのか。

遺品整理で見つかった

 同社は1977年に設立された県内トップの業績を誇る住宅建築会社である。創業者の橋本貞夫氏が一代で築き、15年に息子の吉徳氏に譲った。支店は青森、秋田、岩手の東北3県にあり、従業員数は174人。昨年の売上高は100億円の大台を突破した。地元紙の記者は言う。

「お客さま本位の住宅造りをモットーに創業され、地域貢献として秋田の小学校に竿灯(かんとう)まつりの屋台をプレゼントしたこともありました。東北でも有数の企業ですが、まさか内部であんなことが行われていたとは」

“症状”はいつ見つかったのだろう。 

「ご主人が亡くなったあと、遺品整理をしている際に見つかったそうです。プラスチック製の額に入っていて、紙袋に入ったままだったそうです。おそらく、新年会で渡されたままだったのでしょう。ご遺族は『家族に見せられるようなものではなかったのだろう』ということでした」

 確かに、そうだったのだろう。

 橋本吉徳社長は「毎年の懇親会で、表彰の一環として渡していたもの。行き過ぎた表現だったかもしれないが、他の人にも渡していたので、亡くなった男性の不調の原因になったか疑問に思う」と語った、と報じられている。

「症状」には「第三位」とある。二位、一位もいたのだろうか。

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