マンパワーや秘密主義など問題山積、米国がいくらウクライナ軍に武器を供与しても戦況は好転しない

国際

  • ブックマーク

 米国政府は6月15日、ロシアが侵攻を続けるウクライナに追加で10億ドル相当の武器を供与することを決定した。地上配備型の対鑑ミサイルシステム、高性能ロケット砲や榴弾砲の弾丸などがその内訳だ。2月24日以降、米国政府が決定したウクライナへの軍事支援は総額56億ドルに上る(6月16日付日本経済新聞)。

 オースティン米国防長官は同日、北大西洋条約機構(NATO)閣僚会議に合わせてベルギーの首都ブリュッセルで開催された約50カ国の国防相らとの会合に出席し、「米国と同盟国は引き続きウクライナ支援に取り組むべきだ」と強調した。会合では、ドイツ政府も多連装ロケットシステムの供与を表明した。

「西側諸国に供与を要請していた武器の10パーセントしか届いていない」と不満を口にしていたウクライナだったが、ゼレンスキー大統領は「米国の支援は東部地方での防衛にとって特に重要なものだ。すべてのパートナー国から支援を募ってくれる米国の指導力も高く評価する」と感謝の意を示した。

「世界の警察官」の役割から降りたはずの米国だったが、ウクライナ危機を巡るリーダーシップには目を見張るものがある。地理的に離れたウクライナへの武器供与の9割以上が米国からのものだ。「ウクライナがロシアとの停戦交渉で優位に立てるようになるまで何年にもわたって軍事支援を行う用意がある」との構えも見せている。

 ミリー米統合参謀本部議長が前述の会合で「第1次世界大戦のような厳しい消耗戦だ」と述べたように、戦況は重大な局面を迎えつつある。

「西側諸国からの武器供与が本格化する6月からウクライナは反転攻勢を強める」との期待があったが、事態は一向に好転していない。

 ロシア側が武器搬入を必死にくい止めようとしていることが一因だ。ロシア国防省は15日「ウクライナ西部リビウ近郊でNATO加盟国から供与された武器の弾薬庫を長距離ミサイルで破壊した」と発表した。

 だが、それ以上に深刻な問題が明らかになりつつある。

次ページ:ウクライナ軍には「扱えない」?

前へ 1 2 次へ

[1/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。