プーチンを震えあがらせる“高機動ロケット砲システム”「ハイマース」本当の実力

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300キロが80キロ

 アメリカがHIMARSの供与を決め、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領(44)も安堵しているに違いない──と思ってしまうが、必ずしもそうではないという。

「アメリカは射程80キロのロケット弾しか供与しないと決めました。300キロの戦術ミサイルだとロシア領内の攻撃も容易になるため、プーチン大統領が強く反発してしまう。あくまでも東部戦線に限定して使わせる、とロシアにメッセージを送った格好です。300キロが80キロになった影響は、非常に大きいと言えます」(同・軍事ジャーナリスト)

 ただ、最初から「80キロです」と、正直に言うべきだったのかという疑問は残る。射程を隠してロシアを疑心暗鬼に陥らせる手はあったかもしれない。

 いずれにしてもウクライナが必要としている兵器は届くが、最高の性能は発揮できない、ということになる。

「ゼレンスキー大統領の胸中は複雑なのではないでしょうか。ロシア軍は東部戦線で長距離ロケット弾を使って猛攻撃を仕掛けており、ウクライナ軍は苦戦しています。そのためロシア軍のロケット弾も届かない“絶対的な安全地帯”から狙い撃ちしようと、HIMARSの供与を求めていたからです」(同・軍事ジャーナリスト)

ロシア軍の猛攻撃

 ロイター(電子・日本語版)は6月9日、「ロシア軍、要衝セベロドネツクの大部分掌握 ウクライナ軍の抵抗及ばず」の記事を配信し、YAHOO!ニュースのトピックスに転載された。

《ウクライナ東部ルガンスク州のガイダイ知事は8日、要衝セベロドネツクの大部分をロシア軍が押さえ、抵抗を続けてきたウクライナ軍が市周辺に撤退したと明らかにした。ウクライナ側は先週の反撃で市の一部を奪還していたが、再びロシア軍の手に落ちた》

 東部戦線でウクライナ軍が苦戦している理由の1つに、ロシア製の多連装ロケット砲「BM-30」の威力があるという。

「BM-30が搭載するロケット弾は、射程が90〜70キロあります。NATOの155ミリ榴弾砲の射程は40キロですから、現在はロシア軍のほうが遠距離から攻撃しているわけです。更に榴弾砲は、1発撃つと反撃を避けるためその場から移動する必要があります。一方のBM-30は、12発のロケット弾を38秒で撃ち尽くすことが可能です。火力の違いは明白と言わざるを得ません」(同・軍事ジャーナリスト)

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