レスリング女子 18歳の「藤波朱理」が明治杯を制して100連勝 吉田、伊調と比較すると

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連勝記録にも色々ある

 藤波は2017年6月に全国中学選手権で負けた後、5年間、無敗である。吉田沙保里は同じ100勝まで6年かかっており、その意味では少し早い。吉田は山本聖子(41)=世界選手権4度優勝=に敗れて以来の連勝だった。

 あるレスリング協会関係者は「吉田さんは、早い時期から国内外のトップ級選手とぶつかっての連勝。一方、藤波は、まだ海外の本当の強豪らとの対戦も少ない。素晴らしい記録ですが、単純に数字だけで比較・評価できるものではありません」と話す。

 とはいえ、メルクマールになる数字が出ると、どうしても偉大な先人と比較したくなる。

 吉田は連勝途中、団体戦では2度敗れている。これを考慮すると連勝記録は119で、206はあくまで個人戦の記録だ。2位の伊調馨は数字こそ189と吉田を下回るが、団体戦でも負けていない。ただし連勝の間に、伊調にはあった不戦敗は、吉田にはない。

 柔道では山下泰裕(全日本柔道連盟および日本オリンピック委員会[JOC]の会長)の203連勝(1977~1985年) がある。しかし、連勝中、斉藤仁と戦った最後の試合は山下の負けだという声があり、筆者もそう思う。

 相撲では、戦前の横綱・双葉山の69連勝(1936~1939年)が有名だ。「年間2場所」の時代であることを考えるとすごい。2位は横綱・白鵬の63(2010年)、3位は横綱・千代の富士の53(1988年)。4位は横綱・大鵬の45(1968~1969年)。大鵬は前頭・戸田(のちの小結・羽黒岩)に連勝記録を止められたが、実は勝っていた。「世紀の誤審」は審判団が映像判定を導入するきっかけとなった。格闘技の連勝記録にはそれぞれドラマがある。

志土地との五輪代表争い

 今大会、最終日には東京オリンピックの覇者、志土地(旧姓・向田)真優(24)=ジェイテクト=が女子55キロ級に登場して優勝、プレーオフも制して世界選手権の切符を得た。

 藤波と志土地は、今年の世界選手権こそ別の階級で出場するが、五輪は世界選手権よりも階級が減ってしまう。このため今後、2人はパリ五輪53キロ級の一枠をめぐって争うことになる。志土地は東京五輪での決勝では、当時フィアンセだった志土地翔太コーチ(35)がセコンド入りした。中国選手相手に劣勢だったが「今、出ないと後悔するぞ」と激を飛ばされると、土壇場で大逆転して「涙の金メダル」を掴んだ。東京五輪のレスリング競技で最も印象に残る場面だった。

 志土地は藤波について「手足が長くて強い。負けられない相手」と語っていた。一方の藤波は志土地について「意識していないと言えばうそになる。勝ちたい」と話す。

「憧れのアスリートは阿部詩さん(21=柔道東京五輪女子柔道の金メダリスト)」と屈託のない藤波。パリ五輪に向けての本格的な代表戦いは、12月の全日本選手権(天皇杯)から始まる。
(一部敬称略)

粟野仁雄(あわの・まさお)
ジャーナリスト。1956年、兵庫県生まれ。大阪大学文学部を卒業。2001年まで共同通信記者。著書に「サハリンに残されて」(三一書房)、「警察の犯罪――鹿児島県警・志布志事件」(ワック)、「検察に、殺される」(ベスト新書)、「ルポ 原発難民」(潮出版社)、「アスベスト禍」(集英社新書)など。

デイリー新潮編集部

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