筋トレブームの火付け役が「1日15分しかしない」理由 60歳までに筋トレを始めるべき?
流行語大賞にもノミネートされた「筋肉は裏切らない」
〈順天堂大学スポーツ健康科学部の谷本道哉・先任准教授。2018年からNHKの「みんなで筋肉体操」に出演し、「筋肉太郎」の異名を持つタレントの武田真治らとともに筋トレの普及に貢献してきた。
工学部出身の谷本氏は、理系的な知見をもとに筋トレを解析し、同時に多くの人の感情を揺さぶる数々の前向きな文系的パワーフレーズを生み出してきた。
〈筋肉は裏切らない〉
代表作であるこのフレーズは、18年の新語・流行語大賞にノミネートされてもいる。
そんな谷本氏が、「正しい筋トレ」のあり方について続ける。〉
「みんなで筋肉体操」に出てくる語録は、基本的に私が考えていますが、〈筋肉は裏切らない〉は、ディレクターが考えてくれたものです。非常にシンプルで、インパクトが強く、分かりやすいフレーズで多くの方に親しまれました。
楽できる筋トレは存在しない
しかし、ひとつ注意点があります。〈筋肉は裏切らない〉はあくまで“上の句”に過ぎないということ。「努力は報われる」と同じような意味で捉えないでほしいのです。どんな物事にも通じることだと思いますが、いくら頑張ったところでやり方が間違っていれば裏切られることはあります。したがって、〈筋肉は裏切らない〉の上の句に、必ず〈裏切らないかどうかはやり方次第〉という下の句が続くと考えてください。実際、世の中には、誤解を招きかねない「筋トレ観」が少なからず存在します。
例えば、筋トレ本や筋トレを指南するインターネット上の動画には、「楽して」「これだけで」「みるみる」という甘い誘い文句が多く使われてきました。
そんなわけがない。これらは惹句に過ぎず、「楽して、簡単に」成果が上がるという考え方は投資詐欺と変わりません。「みんなで筋肉体操」で紹介した方法論は、きっちりと取り組んで効果を出そうというものであり、「楽して」「これだけで」「みるみる」という考え方とは相容れません。おかげさまで、そうした惹句は減ってきていて、いい傾向にあると思いますが、まだまだ「楽して」といったような惹句を掲げた動画の再生回数が多い現状が存在します。
一方、歯を食いしばって大変な思いをすればいいという話でもありません。適切に、そしてできるだけ効率よく行う必要があります。実際、私は1日15分くらいしか筋トレをしません。効率と質を追い求めているからです。
惹句にだまされず、かといってむやみやたらにやればいいというわけでもない。両面において、みなさんにも「筋トレリテラシー」が求められているのだと思います。
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