羽生善治九段、前人未到の1500勝達成 かつて王座を奪われた福崎九段に聞いた
強かった1970年代の棋士たち
さて、通算勝利数の「歴代十傑」を眺めてあることに気づいた。
ベスト3は、羽生、大山、谷川浩司十七世名人(60)である。そして4位以下10位までが、加藤一二三九段(82)=タイトル獲得8期=、中原誠十六世名人(74)、内藤國雄九段(82)=棋聖と王位歴=、米長邦雄永世棋聖(故人)、有吉道夫九段(86)=棋聖歴=、佐藤康光九段(52)=タイトル獲得13期=、桐山清澄九段(74)=棋聖と棋王歴=だ。
現在の日本将棋連盟会長で元名人の佐藤だけが「羽生世代」だが、あとの6人は古い時代の大御所。晩年も衰えなかった上の世代の大山と合わせると、通算勝利数上位10人中7人を彼らが占めている。大体が「ヒフミン」こと加藤一二三九段の世代で、主に1970年代頃が全盛期だった。
将棋は、地位にかかわらず幕内と十両の年間の取り組み数が90番と決まっている相撲などと違い、勝てば勝つほど対局数が増えてくる(タイトルを取りすぎるとディフェンディングチャンピオンとして「待ち」の姿勢になり、減ることはある)。
いずれにせよ、現在ほどタイトル数も対局数も少なかった時代の7人が、今なおベストテンに入っていることは驚きだ。その後の谷川世代や羽生世代では、この2人は別にして、これだけの記録を残した、あるいは残せそうな人は少ない。
1970年代、順位戦のA級は、まさに彼らが固定メンバーのような様相だった。1972年に無敵の大山が中原に敗れて大ニュースになり、将棋人気も高まった。筆者が学校で夢中で駒を並べていた時代の懐かしい名棋士たちがいかに強かったか。
将棋界で通算1000勝を達成した棋士は9人しかいない。棋力ももちろんだが体力に恵まれることも必要。だが、「長くやっていたから」というほど単純ではない。通算勝利は、長く現役でいることも条件とはいえ、いつまででもやれるわけではない。規定によって、成績が振るわないと引退を余儀なくされるのだ。大棋士の加藤も例外ではなかった。加藤の引退後、現役最年長棋士だった桐山、1000勝を目指したが996勝でわずか届かず、このほど引退を余儀なくされた。実績など関係ない真の厳しい実力世界だ。
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