「じゃない方芸人」と呼ばれた麒麟・川島はなぜ“逆襲”できた? ノブコブ徳井が考察

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川島はまるで「超高級ウイスキー」

 メッシのような超ハイレベルなオールラウンダー川島さんは、世間的にはずっと息を潜めていた。

 田村さんに勝るとも劣らないくらい上品な川島さんでも、さすがに「おいおい、いつになったら俺の時代が来るんだい?」と一人の時、何度か呟いたに違いない。

 今では考えられないが、収録中、田村さんの横で一言も喋らずに帰ったこともあったそうだ。番組のラストに「で、隣の君はなにかある?」みたいな雑なトークのオチにされたことも数知れないと言っていた。

 あのポテンシャルを持っていて、よくぞ長年我慢ができたと恐れ入る。

 何年も待ち続け、決して腐らず自分の技を熟成させ、超高級ウイスキーのように深みのあるまろやかさと、雑味のないうまさを作り出した。ここまで自分を寝かせられる人は見たことがない。

圧倒的な脳みその差

 一度だけ、川島さんとご飯をご一緒したことがある。川島さんと親交の深い千鳥のノブさんに連れて行ってもらったのだが、ほろ酔いの川島さんに引いた。

 頭が良すぎるのだ。

 僕が1喋った瞬間に、3を喋り、5を喋り、僕が口を開けている状態のまま、川島さんが10を喋ってトークが完結する。

 恐怖だった。

 ここまで圧倒的な脳みその差を見せつけられたのは、他には小籔さんと、とろサーモンの久保田のみだ。

 その久保田とも川島さんは仲が良い。彼らが二人で飲んでいる時のトークは想像しただけでも恐ろしい。想像もしたくないくらいのフォーミュラトーク。

 やっぱり、僕は大したことないんだな。

 飲みの席の他愛もない会話だったからこそ、圧倒的に落ち込んだのを今でも覚えている。それくらい、リミッターの外れた川島さんの回転数とキレはすさまじかった。

 ゴジラ松井のスイングを見て、野球を辞めた高校生は数知れないというが、そんなふうに心と頭にポッカリ穴が開いたような心境だった。

注目されない川島に目をつけた東野幸治

 それから川島さんは大きなチャンスや小さなチャンスで結果を弾き出し続け、世間に逆襲していくかのようにスターの道へ躍り出る。

 僕が『敗北からの芸人論』を出版するにあたり、川島さんがMCを務めるラジオ番組「土曜日のエウレカ」に出た時のことだ。

「田村が『ホームレス中学生』でぶわっと売れていった時、ほとんど親交がなかったのに、突然ツイッターのDMで東野さんから飯に誘われたのよ」

 そこから半年間、まるで東野(幸治)さんの「日陰の女」のような関係は続き、ある日ぱったりと連絡が途絶えたという。

 そもそも、僕が今こうしてあるのも東野さんのおかげなのだ。

 東野さんのコラム「この素晴らしき世界」の連載が終わった時、次のコラムの書き手は誰が良いですか?との新潮社さんの問いに「平成ノブシコブシの徳井くんで」とおっしゃって下さったという。僕からしたら、青天の霹靂発言だ。

 それから僕の連載が始まり、結果として本になり、明らかに仕事の幅も広がった上に深まった。

 東野さんにその真意を聞くと、「徳井くんは面白いからいつか売れるやろと思っていたけど、いつまで経っても売れないから」と仰っていた。

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