スシロー「おとり広告」は“確信犯”の根拠 吉野家と比較してダメージはどちらが大きい?
スシローのパラドックス
「いつもなら、かなり豪華な会場で、担当者から丁寧な説明が行われます。しかし、私の記憶では、少なくともウニのキャンペーンに関しては会見が開かれなかったはずです」(同・千葉氏)
実際、ウニを大量に集めるのは大変だという。6月現在、スシローは国内だけで626店舗を運営している。
これだけ多数の店が、キャンペーン期間中に必要とするウニとなると、トン単位になるのは間違いないようだ。
「なぜウニの値段が高いかといえば、美味しくて人気があり、なおかつ希少性が高いからです。スシローは会社の規模にふさわしい仕入れ体制と物流システムを構築しているはずですが、それでもキャンペーンに必要なだけのウニを確保することは難しかったのでしょう」(同・千葉氏)
千葉氏は「チェーンストア成長のパラドックス(Chain‐store Growing Paradox=CGP)」という専門用語を思いだしたという。
「チェーンストアは規模を拡大すればするほど良質の商品を安価に仕入れることが可能になり、消費者に支持されます。ところが規模が大きくなりすぎると、ウニのような希少性の高いネタには対応できなくなってしまいます。大量購入、大量販売というスケールメリットが活かせず、逆に仇となってしまうのです」(同・千葉氏)
初めての“大企業病”
昔も今もスシローの大半のキャンペーンは真面目に行われている──それは間違いないという。
「ただ、何度もキャンペーンを行ううちに、必要な量を確保できなくても『“売切御免”と広告に書いておけば大丈夫』と押し切るようになったのではないでしょうか。俗に言う“大企業病”の一つに、会社組織が大きくなると部署が肥大化し、経営陣の目が届きにくくなるという現象があります。おとりCM問題がなぜ起きたのか、この観点から説明できるかもしれません」(同・千葉氏)
スシローの持ち株会社である「FOOD & LIFE COMPANIES」の公式サイトによると、スシローの原点は1975年、大阪市阿倍野区に開業した「鯛すし」だという。
「以来、1984年に1号店を出店。2003年に東京証券取引所の第二部に上場、2017年に第一部に上場と、成長に成長を重ねてきました。昔は経営陣と現場の距離は極めて近かったのでしょうが、今はそれなりの距離があるはずです。知らず知らずのうちに、担当者の『ウニは集められなかったけれど、まあいいか』をチェックできない社内組織になっていた。スシローが初めて大企業病に罹患した、と言えるのかもしれません」(同・千葉氏)
しかしながら、どうやらスシローが被った“企業イメージの低下”は、非常に軽微なものとして終わりそうだという。
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