マイルド貧困に陥る“高所得”子育て世帯 少子化を加速させる欠陥制度の全貌
「子ども中心のはずの世の中なのに、なぜ差別されるのか」「子どもに関するあらゆる制度が所得制限の壁で阻まれてしまい、第二子をつくるのは諦めました」「子育て世帯の軽減負担なのに所得制限によって色々なことが自腹になり、可処分所得が逆転しているのはどういったことか」
2021年10月の総選挙で連立与党の一角、公明党は「コロナ禍にあって子を持つ家庭への経済的支援が必要だ」として、18歳以下の子どもがいる家庭への一律10万円給付を公約に掲げた。しかし選挙後、ばら撒き批判の声があがり、連立を組む自民党もこれに後ろ向きの姿勢を見せ、結果として支給対象には所得制限が設けられた。世帯主の年収960万円を超える家庭は支給の対象外となったのである。【中西美穂/ジャーナリスト】
また、2022年6月からは児童手当の特例給付が廃止(2022年10月分から支給停止)されることになった。モデルケース(就業者1人+専業主婦[夫]+子ども2人の世帯)の場合、世帯主の年収が1200万円を超えると、児童手当(3歳未満は月1万5000円、3歳以上小学校修了前は月1万円[第三子以降は月1万5000円]、中学生は月1万円)がもらえなくなる。
こうして、いわゆる高所得層への締め付けは厳しくなっていくばかり。冒頭に挙げたのは、彼ら手当の埒外に置かれた人たちからの怨嗟と疑問の声である。
高所得層であっても、子育ての経済的負担が小さいわけではない。より問題なのは、これらの所得制限策によって、子どもが多くいる「多子世帯」ほど負担が増す仕組みになっていることだ。要するに国は、少子化を何とかせねばならない、少子化は国家的な問題だと叫びながらも、少子化の解決を阻むという矛盾した振る舞いを行っていると言える。
ではそもそも、所得制限の線引きはどうして設けられているのだろうか。
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