コロナ給付金詐欺、申請代行業者が語った“手口” 自主返還が急増する背景は
“自首”する者も
こうして制度を改善しようと努力してきたものの、ここへきて、当初のザル時代の持続化給付金が政府に返還される事例が相次いでいる。
「返還する方法は2種類あります」
とは、給付金制度を所管する中小企業庁の担当者。
「ひとつは私どもが不正受給を認定した場合です。不正受給が発覚すると、受給した額に20%の加算金及び年率3%の延滞金をつけて50日以内に返還していただき、応じなければ経産省HPで氏名を公表します」
もうひとつが自主返還だ。
「受給したご本人が“お金を返したい”と申し出るものです。ただ、その当事者が不正を行っているかはわかりません。こちらが不正を疑っている方の場合は、自主返還を希望されても、拒否することになります」(同)
経産省が自主返還すればペナルティーは科さない、と呼びかけたこともあり、その申出件数は2万件を超え、166億円超が返還済みとなっている。
元東京地検特捜部副部長で弁護士の若狭勝氏は、
「自主返還をしても、だまし取ったという罪が消えるわけではありません。しかし、前科前歴がなければ、逮捕されても、不起訴になる可能性は高くなります」
摘発が相次いだことで、不正受給で処分されることを恐れ、“自首”する者が多いのである。
目玉政策が詐欺の温床に
そもそも、こんな事態を招くほどに大甘な制度を設計してしまったのはなぜなのか。
持続化給付金制度が経産省によって経済対策の俎上に載せられたのは2年前。当時は、新型コロナ対策について、政府への批判が高まり、一刻も早く国民に現金を届けなければならない、という“ムード”があった。
例えば、2020年4月28日の衆議院予算委員会では当時の岸田文雄政調会長がかような発言をしている。
「持続化給付金といわれる給付金ですが、これに対する期待も大きいものがあります。これもスピードが大事になってきます」
そして、一連のコロナ対策について、
「今本当に困っている人たちの思いにしっかり寄り添って、性善説に立った迅速な支給、(中略)こういったことが大事なのではないかと思います」
と熱弁し、これを受けて安倍晋三総理(当時)はこう大見得を切った。
「まさにこれは内閣総理大臣たる私の責任として、やっていただきたい、こう思っています」
政治部デスクが言う。
「企業への資金繰り支援策は45兆円規模に膨れ上がり、持続化給付金はその目玉となりました。岸田さんも苦しい立場で、安倍さんから総理に後継指名してもらう“禅譲路線”をとる中、安倍さんの振り付けで自身が提唱する形をとった『困窮家庭への30万円給付策』が公明党と二階幹事長(当時)の反対に遭って頓挫。『全国民への一律10万円給付』が決まり、党内で冷笑を浴びていた時期でした。そこで岸田さんも失地回復のため、国民に早く届けるという点を強調して、安倍さんを持ち上げるような発言をしたのでしょう」(同)
しかし、2年の時を経て、その目玉政策は詐欺の温床と化してしまっていたことが露見したのである。
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