「AV新法」成立 天使もえが語る「出演者の救済、他にやるべきことが」
かねてより議論を呼んでいた「AV新法」が成立した。4月の18歳成人繰り下げに伴い、18~19歳の出演をどう止めるかが出発点だった法案は、いつしかすべてのAV出演者の救済を求める性格のものに。セクシー女優の天使もえさん(27)は、以前からTwitterで警鐘を鳴らしてきた。本人に話を伺った。
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【AV新法は大要、“契約に問題がなくても出演者は年齢性別を問わず、契約を破棄でき販売を止められる”趣旨のものである。具体的には「AV公表後、1年以内であれば契約を無条件に破棄できる」「それに伴う損害賠償は請求されない」「契約から1カ月以内に撮影を行ってはならない」「撮影終了から4カ月以内に公表してはならない」といった内容だ】
法案に全て反対というわけではないのですが、実際に施行していった場合、どうなっていくのか、不明瞭な部分はありました。表面的なことにしか触れていない、この法案が通されたらどういう問題が生まれて、それをどうクリアしていくかの議論がなかったのだろうなぁ、という印象です。自分達の生活に直接関わる問題なので、軽くは見られないです。
今回の法案では、女優が簡単に契約を解除できることになりますよね。それでは、守ってもらえるからと言って、逆に安易に契約する人が増えてしまうのではないでしょうか。AV出演について、自分でしっかり考え、自分で決断する。そうした機会を奪ってしまうのではないかと思います。そしてそれを含めた数々の不安要素に対しての私たちの声を聞いてもらう機会を得られなかったのは残念ですね。
人は救われるだけでは成長出来ないし、自分で考える機会を作って、自分で決断出来るようにさせないといけないと思います。そうしないと、責任感のない子が増えて、社会全体としても悪い方向にしか行かないと思います。
救済、他にやるべきことは
アングラの子たちって、納税をしていないケースが多いのですが、そういう人がもっと増えると思いますし、このことは、日本の経済にとってもデメリットだと思います。自分のやっていることを整理して、仕事としての自覚を持ってやっているAV女優を始めとした真面目に働いている業界の人達が損をしない、全体がより良くスムーズに回るような内容でなければ良い法律とは言えないのではないでしょうか。
AV女優は、個人事業主として、事務所やメーカーと契約を結んでいるわけですが、その自覚を持っている人はまだまだ少ないです。そういう自覚を持って欲しいというのがありますし、自覚を持つべきだと思います。私自身、ものすごくしっかり考えながら仕事をしているので、自分の意思がないからこういう仕事してるんだろ、と思われるのは、ものすごく遺憾なんですよね。
救済というのはもちろん重要だとは思うんですけど、他にもっとやることがあるんじゃないでしょうか。困窮している女性を救うために福祉の案内を徹底するとか、制度を広めていくとか。そもそも、AVデビューする前に立ち止まれるような場所の提案をしていく方が大切なんじゃないかと。デビューして、後悔している娘がいるから、こうしましょう、では、遅いと思います。正常な判断が出来ていないというのは、確かにそういう子が少なくないのかもしれないですが。でもそういう人に対して、一歩踏み留まらせるような支援機関が有れば、それで問題も少なくなり解決していく部分はあると思いますし。
AV女優というのは、あくまで個人事業主ですので、事務所や制作会社・メーカーはメンタルケアセンターや福祉施設ではないです。なので、AVAN(AV人権倫理機構)などそれ以外にもサポート機関を作り内容を理解させて、利用しやすいものとして充実させていくのが良いのではないかと思います。
みんなでどうするのかを話し合うべきで、実際業界で働いている人間の声を聞くということは、最低限のことだと思うのですが、それがなされているのか疑問です。
仕事として社会的に認められたいという気持ちが強いので、そうした発言の場で、自分達の利益だけを得ようなんて思いません。元々業界に対しては、偏見がありますので、やっぱりおかしい奴らだって思われたら、その時点で終わりです。慎重に発言するので、議論のテーブルに着かせて欲しいなと思います。もちろん、AV被害にあったという方も議論のテーブルに着くべきだと思いますが、そうじゃない女優も必要というか、法律というのは当事者全員が揃って議論して、はじめて完成するものだと思うので。
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