43歳暴走族リーダーVS.神奈川県警「コツコツやるしかない…」暴走族対策室室長が語る捜査の内幕
「ウィリーしてます、ウィリー!」
室長は首を横に振りながら答える。
「証拠を押さえるのが大変なのです。もちろん、彼らの集会はこれまでも目撃してきました。ただ、立件するには、共同危険行為に該当する違法行為を警察官が現認する必要がある。単独でウィリーしたり、うるさい音を立てているからだけでは、共同危険行為には問えません。2台以上で公道に広がり、蛇行運転して、交通の危険を生じさせ、他人に迷惑をかけている現場を押さえる必要があります」
今回はハロウィンだったため、あらかじめ警戒にあたっていたという。読み通り、川崎の千鳥町に100台くらいの暴走族が集結しているという情報が入ってきた。そして、国道一号を川崎から横浜へ集団走行する彼らを追尾し、決定的な証拠を押さえたのだ。
対策室が提供してくれた証拠映像には、緊迫した捜査車両内の様子も伝わってくる。「ウィリーしてます!、ウィリー!」と叫ぶ捜査員の声。映っているのは藤井容疑者だ。
しかし、明らかに法に反する危険な走行をしているのだから、その場で捕まえることは難しいのだろうか。ひと昔前、テレビ番組の「警察24時」で、道を塞ぎ袋ネズミ状態にして、逃げ回る暴走族の首根っこを掴むような大捕物をよくやっていたが……。
怪我をさせてはいけない
「そんな手法を用いていたのはずいぶん昔の話で、いまはどこの警察でもやっていないと思います。理由は危ないから。他の一般車両を巻き込んでしまいかねないし、暴走メンバーたちを怪我させてしまうリスクもある。いたちごっこ状態ですが、違法行為を見つければ検挙する。その繰り返しをコツコツやっていくしかありません」(室長)
こうした地道な事後捜査を中心に昨年、対策室が摘発した共同危険行為は65件。なんとも頭の下がる話である。
いい歳をして、一般市民や警察官に迷惑をかけ続ける「おっさん暴走族たち」。ルールを守って旧車を愛好している人たちにも迷惑である。いい加減に大人としての自覚を持って、他人に迷惑をかけない走行をしてもらいたい。
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