「高級ステーキ」が自販機で買える? 驚異の技術革新の実態に迫る
1台で月商150万円?
強みは単に自販機を提供するだけではない。中食のエキスパートとして、全国のネットワークを生かした商品提供や商品開発、サポート力があることだ。人気のジャンルは餃子などの中華系。駅や飲食店横といった人通りのある場所での設置事例が増えており、会社帰りや訪問先への手土産に買う人も多い。
「冷凍食品は賞味期限が長く、自販機の活用で食品ロスも軽減されます。24時間販売、無人化による人件費削減、話題性など、新たな販売ツールとして多数のメリットがあり、ガソリンスタンドやコインランドリーなど設置場所でもさまざまなニーズがある。平均すると月に約40万円、多い場所で月150万円の売り上げを出す場合も」
調べてみると、自販機のメーカー小売り希望価格は1台200万円。販売代理店の相場は140万円前後とか。そこにキャッシュレス機能などオプションを付ければ価格は上乗せされるのだが、1台で月商150万円? 宝くじでも当たれば筆者も……と欲が出る。
有名店の味を完全再現
その「ど冷えもん」をいち早く導入したのが、業務用麺類製造として64年の歴史を持つ「丸山製麺」(東京・大田区)だ。
昨年3月、全国で初めて有名店のラーメンを販売する冷凍自販機「ヌードルツアーズ」を企画開発した。現在は25都府県の約100か所に設置。年内に全150~200カ所を目標としている。手腕を発揮したのは、IT企業での勤務経験もある、3代目で取締役の丸山晃司さん。
「コロナ禍の影響で、飲食店に麺を卸しているうちの会社も一時は売り上げが8割も減りました。経営立て直しのため、通販の強化に取り組んだのですが、送料が高いというデメリットがある。ならばとお客さまが一度にたくさん注文すると、冷凍庫の容量の問題などに直面します。飲食店も救える形での販売方法を考え、対面でないチャネルで1食から送料なしで買える自販機を用いた企画を思いつき、新規事業として立ち上げることにしたのです」
親交のあるラーメン店や有名店に呼びかけて商品を開発。各店の味の完全再現を目指した。丸山さんの会社の麺を使用していない店がほとんどだったが、同社の開発メンバーが研究し、店主に合格をもらって商品化。現在、全国から約20の人気店が参画している。1種千円だ。
都内を中心に店舗がある「AFURI(あふり)」の「柚子塩らーめん」を買ってみた。スープと生麺、具材が冷凍セットになっており、スープと具を湯煎で温め、別に麺をゆでて合わせるだけ。名店の味を家庭で楽しめるのはうれしい。
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