首都直下地震が起これば「死者6100人」で済むのか検証 専門家は「ケタが二つ足りない」

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30年以内で発生確率70%

 死者のうち、6割が「要配慮者」、すなわち高齢者や障害者などに集まることも気になるデータだ。

 そして、

「災害後のシナリオで、タワーマンションの危険性について指摘しているのも注目です」

 と渡辺氏が続ける。

「東京ではこの10年で千棟もタワマンが増えています。巨大地震が起これば、エレベーターが停電で止まり、密閉空間で閉じ込められてしまう事故が多発するでしょう」

 報告書によれば、「都心南部直下地震」で停止に至るエレベーターは約2万台とされている。

 それだけではない。

「最近の高層マンションの上層階には、高齢者の方が住んでいることも多い。こうした方々が、電気、水道、ガスといったライフラインが止まる中、それが復旧するまでの間、精神的、身体的にどれだけ耐えられるか、ということは十分に検討しておいた方がいい」

 報告書でも、要介護認定者などがタワマンに取り残された場合、ショックや不安から体調不良となり、震災関連死に至る可能性を指摘しているのである。

 前出・鎌田教授が言う。

「今回の想定では、首都直下地震は今後30年以内で70%の確率で起こるとしていますが、これも誤解を招く。確率表現では一般の方々の行動変容にはつながりません。30年以内で70%の確率とは、地震が来るのが30年後かもしれない一方、明日起きるかもしれないということ。行政はそこをきちんと伝えないと駄目なのです」

 今回の報告書は危機感を都民と共有できたのか。

 来年は関東大震災から100年の節目の年。1世紀前のこの悲劇の教訓は、果たしていかされるのだろうか。

週刊新潮 2022年6月9日号掲載

特集「10年ぶり被害想定改定 『首都直下地震』が本当に『死者6100人』で済むのか!?」より

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