王毅外相の後任を巡り、中国共産党は大モメ 習近平体制は決して盤石ではない

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「習近平一強体制」……。秋の中国共産党大会を前に、日本メディアは一様にそう報じている。しかし、本当にそうだろうか。中国ウォッチャーたちはいま、ある人事の動きに注目をしている。外相の後任をめぐり、異例の事態が起きているのだ。【武田一顕 ジャーナリスト・映画監督】

 中国共産党は5年に一度、北京で党大会を開く。党大会では常に人事の大異動があるため、特に大きな注目を集めている。

 まず、党のトップである中国共産党総書記の人事。これまでは二期10年しか連投できないシステムで、習近平は今回の党大会で退陣するはずだった。

 しかしすでに報じられている通り、2018年、国家主席の任期を撤廃する憲法改正を行い、習は自身が11年目以降も君臨する道を開いた。今回も続投はほぼ確実だ。マッチョな権力者として君臨し続けようとする姿は、プーチンとも重なる。

 次に、常務委員の人事。党大会では、最高権力集団である中国共産党中央政治局常務委員会の委員=党首脳部の多くが入れ替わる。彼らはその人数によって、チャイナセブンやチャイナファイブと称される。これまでは、この時期になると主に香港紙から誰が常務委員に昇格するかの情報が少しずつ漏れ聞こえてきたが、今回は確たる情報がない。国家安全維持法の施行で香港のマスコミが萎縮しているというよりも、まだ本当に決まっていないのだろう。

 そんな中で注目すべきは、李克強首相の今後だ。現在は中国共産党ナンバーツーだが、秋になっても67歳の李は、定年制にひっかからない。今年3月全人代後の記者会見で、「首相として最後の会見」と明言した李だが、今後も常務委員として引き続き別の役職につくかどうかで、李を頂点とする中国最大の派閥・共産主義青年団の今後の影響力もわかるだろう。

 そして、冒頭に述べた中国ウォッチャーたちが今、最も注目しているのが、外交部長=外相の人事だ。現任は王毅外相だが、すでに就任から10年近く経っているため、退任する見込みとなっている。中国をはじめとする独裁国家では、軍や党中央の人事に比べて、外相の地位は決して高くない。一方で、対外的な露出度は圧倒的に多く、外国人記者が接触する機会も多い。つまり、地位は高くなくともイメージ戦略の上で最も重要な閣僚と言える。

 その王毅外相の後任人事をめぐって、中国共産党がぐらぐらと揺れている。

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