「値上げ許容」発言の黒田・日銀総裁 大炎上に荻原博子さんが“妙に納得した”ワケ
八方塞がりの日銀
改めて、何のために「異次元の金融緩和」が行われていたのかを振り返ってみよう。
日銀が銀行にじゃぶじゃぶ金を送る。カネ余りになった銀行は、どんどん企業や個人に低金利で融資する。経済活動は活発化し、好景気が到来。庶民の収入も増える……。
「“黒田バズーカ”による物価上昇は、絵に描いた餅だと証明されました。今の日本で銀行から資金を調達し、工場や自社ビルの建設に投資する企業なんてありません。国は庶民にも、株式や住宅ローンなど様々な投資=借金を呼びかけてきましたが、これも失敗に終わりました。好景気ではない以上、企業も庶民も、そんな余裕はないのです」(同・荻原さん)
荻原さんは「黒田総裁が2年間で効果がないことを認め、金融緩和を止めたのなら、まだ評価できました」と言う。
「しかし、今も緩和は続いています。この政策を続ける限り、円安が更に進む懸念があります。つまり、もっと物価が上がってもおかしくありません。かといって、日銀は利上げに動くこともできないでしょう。日本経済は依然として不景気ですから、金利を上昇させると、銀行から融資してもらおうという企業は減るばかりになります」(同・荻原さん)
家計の残高は過去最高
果たして日銀は利上げに踏み切るのか──専門家でも、なかなか予測は難しいという。
「何しろ金融政策の大転換になります。ソフトランディングに成功するのか、カタストロフィ(破局)が訪れるのか、全く分かりません。このまま身動きできないとなると、日銀は詰んでしまいます。黒田総裁が『家計の値上げ許容度も高まってきている』と発言して批判が集中したという事実は、日銀が正しい金融政策を行ってこなかったことの象徴と言えるのではないでしょうか」(同・荻原さん)
日銀が3月17日に発表した2021年10─12月期の資金循環統計によると、家計が保有する金融資産残高は同年12月末時点で1948兆円となり、前年に比べ2・9%増加。過去最高を更新したという(註)。
「多くの人が生活は苦しいのに、貯金額は過去最高でした。私たちは先行きに不安を感じていますから、文字通り“爪に火をともす”ようにして貯金しているのです。ただし、日銀や財務省が信用できなくなった今、預金を増やすというのは非常に合理的な行動です」(同・荻原さん)
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