スポーツ界で“がんばらない”が流行 選手ファーストのメリット、デメリットは
『がんばらない勇気』『がんばらない目標達成』『がんばらない生き方大全』など、書店に“がんばらない”を勧める本が溢れている。『「がんばらない」勉強法』『モテたいなら「がんばらない」』から『がんばらない片づけと収納』『がんばらないおうちスパイスカレー』『がんばらないことをがんばるって決めた。』まで枚挙に暇がない。
【写真3枚】優勝の可能性を残しながら異例の休場となった「宇良」
スポーツ界でも肉体的に“がんばらない”がトレンドになっているようだ。
6月9日から世界陸上代表選考を兼ねた日本選手権が行われるが、先だって5月7日に実施された女子1万メートルに、期待の新星、不破聖衣来(せいら)(19)の姿はなかった。
昨年、女子1万メートルで日本歴代2位及び日本学生新記録を達成した不破は、今年1月の全国女子駅伝で13人ごぼう抜きを演じて区間新記録を樹立。無駄のないフォームは、青学大の原晋監督らも大絶賛で、一躍スターダムにのし上がった。
ところが、
「故障を理由に欠場を発表。彼女が所属する拓大女子陸上部の五十嵐利治監督曰く、“将来の事を考えて”判断したとのことです」
とスポーツ紙陸上記者。
「“将来の事”というのはもちろん2024年パリ五輪のことでしょうが、世界陸上だって2年に1度の大舞台。返す返すも残念です」
「単なる保身」との声も
大相撲夏場所では、14日目に休場した東前頭6枚目・宇良(29)が話題に。
「前日の取組で痛めた左足首にテーピングをして出ようとした宇良を、木瀬親方が止めたのです。このとき首位の照ノ富士らが10勝3敗で、宇良は9勝4敗。優勝の可能性を残しての休場は異例です」(相撲記者)
“無理させない”といえば、4月17日、ロッテの佐々木朗希(20)が2試合連続完全試合達成目前で降板した一件。投球数が100球を超え、大事を取ったとされる。
「この井口監督の判断をマスコミやファンは好意的に評しました。逆に言うと、もしあのとき佐々木に無理させていたら猛批判を浴びていたことになる。この流れがドミノ倒しのように他競技の指導者にも伝播し、“無理させない”を良しとする風潮が醸成されつつあります」(先の陸上記者)
一見、“選手ファースト”の好もしい傾向と映るが、
「良い選手を育てて賞賛される利益より、選手を潰して批判される損失の方が大きくなった、と指導者は感じ始めている。その判断は、選手をおもんぱかってというより、単なる保身では?」(同)
もちろん選手がケガをしないように配慮することは必要だが、やりすぎには注意した方がいいのかもしれない。