世界最高齢で太平洋横断の83歳「堀江謙一さん」 帰港セレモニーで希望通りに「ビール」を飲めなかったワケ
昭和のヒーローは令和の世でもヒーローであり続けた。60年前、世界で初めて小型ヨットで単独無寄港太平洋横断を成し遂げ、のちに石原裕次郎主演で映画化もされた著作『太平洋ひとりぼっち』(文藝春秋)で知られる海洋冒険家、堀江謙一さん(83、兵庫県芦屋市在住)が、「サントリーマーメイドIII号」(全長約5.8メートル)を操って世界最高齢での単独無寄港太平洋横断に成功した。【粟野仁雄/ジャーナリスト】
【写真】詰めかけたファンにもみくちゃにされる83歳の堀江謙一さん
8500キロ、69日間の航海
堀江さんは、ことし3月26日(現地時間)に米サンフランシスコのゴールデンゲート橋のたもとを出発し、転覆もなく順調に航海していた。日本に近づいてから黒潮の蛇行や悪天候に遭ったが、落ち着いた操舵術で克服。6月4日未明に、米サンフランシスコ港からの約8500キロを航海、69日間かけて、ゴールと決めていた紀伊水道に達した。本拠地としている新西宮ヨットハーバー(兵庫県西宮市)まで曳航され、検疫などを終えて5日午後、堀江さんは歓迎セレモニーに臨んだ。
詰めかけた人たちの大拍手を受け、しっかりした足取りでヨットを降りて西宮市長らから花束を受け取ると「お待たせしました。この航海によって精神と肉体の完全燃焼を成し遂げた」と胸を張り、「西宮の笹生病院から沢山の薬をもらって積み込んだけど、使ったんは目薬とバンドエイドだけでしたわ」と健康体を自慢した。そして「若輩ではありますが青春、真っただ中。大器晩成を目指して頑張ります」と締めた。カメラマンの求めでガッツポーズをし、もみくちゃになりながら会見場に移る。
「自炊は飽き飽きしているので出てくるものは何でも食べたい」、最高齢での記録達成については「僕より高齢でヨットをしている方はいると思うけど、(僕のように)ばかばかしいことはやらないのでは」と話した。「前の航海から十数年、空白があったので、ちょっと忘れている面もあった。再学習できたので次回があればもっと良い航海ができる」と衰えぬ意欲を見せた。海洋の状況について「60年前は廃油などがものすごく流れていたが今は全く見ない。海に出る人のマナーやモラルが上がっている」と喜んだ。
堀江さんは長年のアマチュア無線(CQ)の愛好家でもある。「私のコール番号はJRですが、JAとか私より年長の人が多い。若い人がもっとCQに関心を持ってほしい」とも話した。
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