「慰安婦証言」はなぜ二転三転? 「慰安婦は売春婦の一種」発言で訴追された韓国人元教授が検証

国際 韓国・北朝鮮

  • ブックマーク

米国でも論文撤回要求が

 他方、米国の研究者の存在も大きな力となっている。他でもないハーバード大学のマーク・ラムザイヤー教授だ。同氏は純粋な学術誌「International Review of Law & Economics」2021年3月号に日本軍慰安婦が売春業者と結んだ契約を「年季契約」(年限を決めて売春婦やキーセンとなる契約)という概念で実証的に分析する学術論文「Contracting for Sex in the Pacific War」を発表した。

 しかし論文が世に出るや否や、彼は米国にいる日本学専攻の「政治的正しさ」主義に心酔した教授たちから大きな非難を甘受しなければならなかった。左派の常套的なレッテル貼り、すなわち「日本極右の手先」という非難は、論文撤回要求運動にまでつながった。

 彼が米国で受けた非難は、私が韓国で受けた非難とあまり変わらない。自分たちと違う立場の「論文を書いた」、あるいは「講義をした」という理由で、マスコミを通じて「いじめ」をし、大学から追い出す処罰を既成事実にしていく図式だ。違いがあるとすれば、ハーバード大学は学問の自由を守ってくれたが、延世大学はこれを守ってくれなかったという点だけだ。しかしいつかは真実が明らかになる。私はそう信じる。

政治利用された慰安婦

 問題となった講義を終え、筆者が学生たちに語った言葉をここに写すことで、結論に代えよう。

〈……してもいないことを日本が犯したと言うのは不義じゃないですか。(実際に)やったことをもって話さないと。事実に基づいていない正義は存在しませんよ。事実に基づいてこそ正義が立てられます。してもいないことをしたことにして誰かを、(しかも)多くの人を殺すのは、それこそ魔女狩りだ。

 ところで皆さんは、日本の植民地時代の元慰安婦に対してこんなにも同情しながら、不思議と現代の売春女性たちには同情しないのはなぜですか? その人たちにも同情してください。その人たちを救える道を作る努力もしてください。なんでタイの女性が韓国まで売られてきて風俗マッサージ屋で働かされるのか?って。なぜ、それは放っておいて、100年前にあったことで大騒ぎなのか?

 すぐ目の前で起こっていることは見て見ぬふりをしながら。

(ソウルの)新村(シンチョン)の夜道に出てみてください。皆さんがお酒を飲んでいる裏通りに行くと、まさにそんな行為が起こっているのに、分からないというのですか? それを知らないふりをするのは卑怯なんですよ。

 皆さんの目に間違いが見えたらすぐに直さないと。今すぐ! なぜ、それには目をつぶって、100年前に家庭が貧しくて、自分の家を経済的に助けようと戦線に出たあのおばあさんたちを利用するのか!

 ……南に行くと、新村に行くと、売春業が盛んになっているのに。その売春業をなくす努力をしてください、むしろ。それは見ぬふりをしながら、卑怯なんですよ。挺対協が作った「食卓」に、皆さんは甘い正義感で寄り添い、社会正義を成し遂げようと大騒ぎしていますが、なんてつまらないことなのか。

 皆さんは一度でも会ったことがありますか? その人たちの人生がどうだったのかを調べてみたことがありますか。でも李栄薫教授は調べ尽くしましたよ、彼女らの証言を。若い時にした証言、あの仕事から国へ帰ってきて60年代に自分が何をしてきたかという証言がそのまま出ています。本を読んでください。あの人たちは本当に一所懸命暮らしました、挺身隊のおばあさんたち、慰安婦のおばあさんたちは。

 それを政治的に利用しているんです。あんなに苦労して、一所懸命生きてきたのに。今売春業で働いている女性たちに悪口は言えません。なぜなら、皆さんは環境が良くて、その人たちは環境が悪かったんです。悪い環境の中で食べていくために、そこで働いているんです。そんな女性たちに向けて勝手なことは言えないですよ!〉

(敬称略)

柳 錫春(リュ・ソクチュン)
元延世大学教授。1955年生まれ。延世大学卒。米国イリノイ大学で博士号。87年延世大学社会学科助教授、97年より同教授となり2020年に定年退職。

週刊新潮 2022年6月2日号掲載

特別読物「独占手記 続『史実を踏みにじる韓国に未来はない』 変遷を重ねた『慰安婦証言』の裏側」より

前へ 2 3 4 5 6 次へ

[6/6ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。