上島竜兵さんの死でなぜテレビ局は暴走したのか…「自殺対策推進センター」代表が語る「自殺報道ガイドライン」の“真意”

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自宅前から中継

 9時過ぎには厚労省に注意喚起文を送付し、内容の確認を依頼した。確認を終えると、登録してある240以上のメディアにメールやファクスで送信。それと平行し、手分けしてテレビ、ネットニュース、Twitterの動きなどをチェックする作業に入る。やがて清水さんが恐れていた事態が起きていたことが発覚した。

「複数の番組が、上島さんの自宅前から中継を行ってしまいました。ある社は、自殺の手段についても触れていた」

 フジテレビ「めざまし8」とテレビ朝日「羽鳥慎一 モーニングショー」である。自殺の手段にまで触れたのはフジ。街頭インタビューで市民の反応を流している番組もあった。

「街頭のリアクションを伝えることは、より大きなリアクションを生むことにつながりかねません。自宅前からの中継や街の声を紹介するのも、ここしばらくは控えられていたことでした。私も報道機関に勤務していた経験があるので、まだ情報が足りない時に、“まずは現場へ”と動くメディアの心理はよくわかります。”分かっていることはどんどん伝えていこう”という判断が一部であったのだと思われますが、自殺報道として極めて不適切だと言わざるを得ません」

異例の「2回目の注意喚起」

 とりわけ懸念されたのが、ネット上の拡散具合だった。Twitterには「上島竜兵」がトレンド入り。あの社がやっているならばウチも……。横並び意識が働き、どんどんセンセーショナルな方向に走っていきかねない状況に陥っていた。

 厚労省も同様の危機感を持っていた。両者で協議し、午後8時40分、厚労省の 公式 Twitterアカウントで、異例の第2弾の注意喚起に踏み切った。

 第2弾では、具体的な文言に踏み込んだ。

〈以下のような放送・報道は、自殺リスクを高めかねません
・自殺の「手段」を報じる
・自殺で亡くなった方の自宅前等から中継を行う
・自殺で亡くなった場所(自宅)の写真や動画を掲載する
・街頭インタビューで、市民のリアクションを伝える〉

 さらに、上記したガイドラインに反する報道を行った番組担当者に、JSCPは個別の申し入れもした。だが、この状況を危惧していたのは、清水さんたち専門家だけではなかった。Twitterなどでは、ガイドライン違反に気づいた一般の視聴者たちも、フジやテレ朝を批判し始めていた。

「JSCPが活動を始めた2年前から、一般の方に対しても、『自殺報道ガイドライン』についてTwitterなどで情報発信してきたのですが、浸透してきたのだと感じました。この注意喚起は、メディアに対して行うだけでは大きな効果が望めません。メディアは、受け手が求めるものを提供しがちです。実際、『ニーズがあるから自殺報道をするんだ』と話す報道関係者もいます。視聴者や読者の意識を変える働きかけも並行して行うことで、適切な自殺報道をメディアにうながせると考えています」

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