年金問題「少子高齢化で破綻」は間違い? 支給額が50年前より増えている理由とは
少子高齢化で制度はもつのか?
よく年金について損得で論じる人がいますが、保険を損得で論じても意味がありません。保険というのは「それに該当する事由が起こらなかったから損をした」とは誰も考えません。「無事で良かった」と思うだけです。
障害年金や遺族年金は誰にでも該当するわけではありませんが、年を取って働けなくなるという事態は誰にでも起こります。したがって年金で最も中心的な役割を果たすのは「老齢年金」です。ところがこの老齢年金ですら、人によって、あるいは生活状況の違いによって、いつから年金を受け取り始めるかを自分で自由に決めることができるのです(ただし、受け取り開始時期は60歳~75歳までの間です)。
そして年金の本質が保険だからこそ、どの時代でも現役世代が払い込んだ保険料で高齢の受給世代の生活をまかなうという仕組みになっているのです。
ところがここでさらに多くの人が抱いている疑問が出てきます。それは「現役世代が高齢世代を養うのであれば、少子高齢化になると制度はもたないのではないか?」という疑問です。
これは誰もがそう思っているはずです。なぜなら少子高齢化というのはよく知られている社会現象だからです。
年齢で切ることは妥当?
これについてはこんなストーリーがよく語られます。「かつては十数人で1人の高齢者を支えていたのが、やがて支え手が少なくなり数人で1人を支えるようになる。そして将来は1人で1人の高齢者を支えなければならないので、制度はもたない」という話です。
図1のようにそれぞれ御神輿(おみこし)型から騎馬戦型、そしていずれは肩車型になっていくというのは比較的おなじみの図柄です。これによって若い世代は年金の将来に絶望し、現在年金を受け取っている世代もいずれ破綻するのではないか?という不安を持ってしまうことでしょう。
たしかに65歳以上と65歳未満の年齢で切れば、図2に書いてあるような数字となりますので、年金制度の将来は暗いというふうに見えます。でもこの図のように「65歳未満の人が何人で65歳以上の人を支えるのか?」という考え方は果たして正しいのでしょうか?
本当は、「1人の働いている人が、何人の働いていない人を支えているか?」という方が正確なのではありませんか。なぜなら、社会保険料というのは働いている人でなければ負担することができないからです。
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