年収3500万円から月収5万円に転落……45歳の歌舞伎町「現役ホスト」 が語る、奈落の底から返り咲けた理由
「知ってるよ」とは言わない
それからは、年齢に関係なく、とにかく率直になんでも尋ねて、教えてもらうようになりました。若くて売れているホストにTikTokの使い方を手取り足取り教わって、悪戦苦闘しながら動画をアップし始めたところ、今ではフォロワーが1万5000人を超えています。年下の子も、僕みたいなオッサンから熱心に質問されたら、「しょうがないなぁ」と思いながらも教えたくなる。後輩からは常に勉強させてもらってますね。今月のナンバーワンだった後輩にも「ねぇ、どうやってこんなに売り上げたの?」って普通に聞きますよ(笑)。
タレントの高田純次さんが「おじさんは説教と思い出話、自慢話を語っちゃだめなんだ」と話していて、まさにその通りだなと思うんです。自分がナンバーワンだった頃の話を持ち出して説教するなんてのは絶対ダメですね。むしろ、相手の話を聞いてあげる。たとえば、後輩から「伯爵さん、こんな話があるんですよ」と言われた時に、自分がすでに知ってる内容のときもあるじゃないですか。でも、「あぁ、知ってるよ」とは言わない。ちゃんと最後まで話を聞いて、「そうなんだ! 面白いじゃん!」と答える。そうするうちに相手も話しかけやすくなると思うんです。
後輩も以前よりは気を遣わなくなったんじゃないかな。酔っ払うと「おう!“爵”、飲めよ!」とか言ってくる奴もいるんで(笑)。昔だったらムッとして「お前、裏に来いよ」となってたんですけど、今は笑って流せます。いじられる喜びや美味しさを知ったというか、自分の考え方をガラッと変えたことで、昔は耳に入ってこなかった言葉が聞こえるようになって、それを素直に受け止められているんだと思います。
その言葉は「プラス」になっているか
僕は嫌われることよりも、無視されたり、忘れ去られることの方がよっぽど怖いんですよ。その意味で、僕のことを悪く言う人は、少なくとも僕に関心がある人。SNSにアンチコメントを書き込まれることもありますが、すべて読んで、必ず“いいね”を押します。最近は、同業の若いホスト君から相談のDMをもらうことも増えたんですが、それにもできる限り丁寧に返事をしますね。
もちろん、いじられるのと馬鹿にされるのは違います。それこそ、ヘルプについた後輩ホストの言葉に悪意を感じることもありますよ。そんなときは10回我慢してから対応する。裏に呼んで1対1で話をします。大事なのは、僕がプライドを傷つけられたことについて叱るんじゃなくて、「そんな言い方をしても誰のプラスにもならないよ」ってこと。お客さんの前で僕をいじって笑いが起きるなら何の問題もありません。でも、お客さんがいたたまれない顔をしてたら、それは失敗なんです。自分の言葉が、僕やお店、そして、本人やお客さんにとってプラスになっているか。そこを丁寧に説明して「どう思う?」って聞けば、「あっ、確かにそうっすね。すみません」と言ってくれます。
かつては、ナンバーワンを獲った後輩から「先月、僕よりだいぶ売上が下でしたね」とか嫌みを言われましたけど、今はそんなことはないですね。売上を上げた後輩に対しては素直に「すごいな」と思うし、リスペクトを欠かさない。そこは営業マンとも一緒だと思うんですけどね。自分にないものを持っている相手を尊敬して、認めてあげて、それを態度に示せばまず馬鹿にされません。実際、年齢なんて関係なく、すごいものはすごいじゃないないですか。
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