年収3500万円から月収5万円に転落……45歳の歌舞伎町「現役ホスト」 が語る、奈落の底から返り咲けた理由

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 誰もが時の流れと共に歳を重ねてゆく。つい昨日まで新入社員だったと思っていたのに、気づけば40歳を過ぎて中堅になっている。年上の部下ができることがあれば、年下の上司につくこともある。体力は徐々に落ち、自分の限界も見えてくる。フリーランスも同様だ。優れた若手に追い抜かれるなか、せめて現状を維持しようと四苦八苦する。家族ができれば、仕事との向き合い方も変化してゆく。では、不惑を過ぎた者たちは、組織やそのフィールドの中で、どう振る舞えばいいのか。【高橋ユキ/ノンフィクションライター】

 日曜昼下がりのドキュメンタリー番組「ザ・ノンフィクション」(フジテレビ系)で、2017年と2019年に密着取材を受けたホストの「伯爵」こと柏原勝哉氏は、45歳の今も、歌舞伎町のホストクラブ「HAMLET」に在籍している。

 20代から30代にかけて5年連続で売り上げナンバーワンを記録し、年収3500万円を稼いだという輝かしい過去を持つ「元カリスマホスト」は、しかし、番組密着当時、どん底の状態にあった。時代が変わり、若手が増えるなか、自分の営業スタイルに固執して周囲から孤立。目に見えて指名客は減り、若いナンバーワンホストのヘルプにつくことも増え、月収は5万円まで落ち込んだという。

 過去に栄光を手にしたものが、自分のやり方を変えることは容易ではない。ところが、伯爵は若手に教えを請い、見よう見まねでSNSに参入するといった努力を重ね、42歳にしてナンバーワンに返り咲いた。現在は「生涯現役」を目標に据えて、奮闘し続けている。
 
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 バンド活動を続けるために歌舞伎町のホストの世界に飛び込んだのが22~23歳の頃です。全然売れなかったですよ、当初は。指名が全然入らなくて「俺どうしよう?」って思ってたときに、お客さんにちょっとオラついたら、なぜか指名が入るようになって。そこからは“オラオラ営業”一本でした。

 何しろ、当時は会話術もなければ、人生経験も足りない。枕営業をする気もなかった。ちょっとマウントを取る彼氏じゃないですけど、「お前、どこにいんだよ、今から来ないと知らねえぞ」みたいなことを言って、女の子を呼んでましたね。そしたら売上がどんどん上がっていったんで、「あ、俺にはこの営業スタイルが向いてるな」、と。25歳から30歳過ぎるまではそんな感じでした。

 面白いもので、指名って売れてるとこに集まってくるんですね。そのうち歌舞伎町でも、「あの店のナンバーワンはあいつだよね」って噂になる。当時はホストクラブも今ほど多くなかったので競争率も低かったし、歌舞伎町を歩いてるだけで「ホストさんですよね?」「どこのお店ですか?」って女の子の方から話しかけてきてくれました。

 今と比べると、お酒の価格設定も全然違うけど、月に500万円くらいの売上はキープしてましたよ。その当時は、歌舞伎町にホストクラブが50店舗もなかったと思うんです。それが今では300店舗ぐらい。1店舗にホストが50人いるとすれば、歌舞伎町全体では1万5000人。やっぱり競争も厳しくなる。徐々に店が増え、ホストも増えていくなかで、僕はだんだんと若いホストに負けていった。35歳ぐらいからガクンと売上が落ちていきました。

「一生、その時代で生きてけばいいじゃん!」

 いま黒歴史を思い返すと、時代が変化しているのに営業スタイルを変えなかったのが大きかったと思いますね。20代の頃と変わらないオラオラ営業で、「会いたかったらお店まで来なよ」というスタイル。でも、ホストクラブが増えれば、お客さんの選択肢も増えるわけです。いつしか女の子の方がホストよりも立場が強くなっていて、「他のお店のホスト君なんて初回1000円で行っただけなのにエッチしてくれたし」みたいに天秤にかけられてしまう。こっちが「そういうことしないから」と伝えたら、「じゃあ、一生その時代で生きてけばいいじゃん!」っていう具合で。昨日もそんなDMもらっちゃいました(笑)。

「ザ・ノンフィクション」に出たのは39歳ぐらいで、まさにどん底期。指名もないし、恥ずかしくてキャッチにも行けなかった。「伯爵は売れてる」っていう時代があったから、プライドが許さなかったんでしょうね。ほんと自殺してもおかしくないくらいの精神状態でした。その考え方が変わったのは、「ザ・ノンフィクション」のディレクターと出会って番組に出演したおかげです。

 放送されるまでは「俺、大丈夫かな?」「プラスになってんのかな?」みたいに、悩みました。番組では娘ほど年の離れた若い女性客になじられ、泥酔して後輩ホストとケンカする姿まで映っていたので……。でも、あの番組のおかげで今があるんです。実際に放送を何度も観返しながら泣いたし、SNSに書き込まれた感想もすべて読んで、もう本当に自分のダメな部分に嫌というほど気づかされました。そこで大きく考え方を変えた感じです。

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