ウクライナ危機長期化 いま西側諸国は主戦派と和平派、どちらの声が多いのか
報じられた「ウクライナ志願兵の悲惨な状況」
ウクライナのゼレンスキー大統領は5月29日、ロシアの侵攻以降初めて首都キーウを離れて激戦が続く東部州を訪問し、前線の兵士を激励した。その際「領土防衛の任務を果たさなかった」ことを理由に情報収集や治安維持を担うハルキウ州保安局のトップを解任するという異例の決定を下している。ウクライナ最高会議(議会)が5月22日に「侵攻初日から敷かれた戒厳令をさらに3ヶ月延長する」ことを決定した際、ゼレンスキー氏は戒厳令下での18~60歳の男性の出国禁止措置を緩和するよう求める声が上がっていることについて「理解できない」と疑問を呈していた。
「ウクライナ軍の士気は高く、指導者から前線の兵士に至るまで『一枚岩』となってロシア軍の猛攻に不死身の抵抗を続けている」とする西側メデイアが創りだした麗しいイメージと厳しい現実との齟齬が露呈し始めている。
5月28日付ワシントンポストは西側メディアとしては初めて前線に送り出されたウクライナ志願兵の悲惨な状況を赤裸々に報じた。「乏しい武器しか持たない訓練不足の兵士たちが混乱した指揮命令系統の下で戦いに繰り出されている」「配給される食料が極端に不足し、士気は著しく低下している」「確実に死ぬ戦いを強いられ、上からの命令を拒絶する兵士が急増している」という。
紛争を徒に長引かせることで最も被害を受けるのはウクライナ国民だ。
キッシンジャー元国務長官が5月下旬に開催された世界経済フォーラムの年次総会(ダボス会議)の場で「容易に解決できない確執や緊張を回避するために2ヶ月以内に交渉を始めるべきだ」と主張したように、一刻も早い停戦が求められている。
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