酒・タバコの我慢は健康寿命に悪影響? どんどん老いる人の特徴は「おむつや杖を嫌がる」

ドクター新潮 健康 その他

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年齢プラス90の血圧は問題ない

 たしかに70代ともなれば、大抵の人は血管の壁が厚くなって動脈硬化の状態になります。そのため、ある程度の血圧や血糖値がないと脳などに酸素や栄養が届きにくくなる。それなのに、多少血圧が高いからといって降圧剤で無理に血圧を下げれば、体へ栄養が行き渡らず結果として頭がぼんやりしてだるくなります。

 そうした薬を服用する毎日から解放されたら、もっと人生が楽になると思いませんか。もちろん極度の高血圧は問題ですが、今の130以上を高血圧とする基準はあまりに低く設定されていると思います。日本人の死因で一番多かったのは、1980年まで脳血管疾患でした。この原因として高血圧がやり玉に挙げられてきましたが、栄養状態のよくなった今では多少血圧が高くてもそう簡単に脳の血管は破れません。高齢者でも年齢プラス90くらいの血圧値であれば、まず問題ないと考えてください。

 血圧と同じくコレステロール値も下げろと言われますよね。動脈硬化の原因ではありますが、他方でコレステロール値が高い人ほどがんになりにくいというデータも存在します。日本では動脈硬化が一因となる心筋梗塞で亡くなる人と比べたら、がんで命を失う人の数の方が12倍も多い。またコレステロールは細胞膜の材料としても用いられるため、コレステロール値の低い人ほど免疫機能が落ちるといわれます。

寝たきりのリスク

 加えて男性ホルモンを形成する上で欠かせない物質でもあるので、コレステロールを下げる薬を飲むとEDになりやすく、意欲や活力低下を招く。値を下げようと無理して肉を抜くよりも、食べたいものを口に入れた方がよほど健康的な老後を送れると思います。

 食生活では塩分や糖分の摂取も控えるよう言われることが多いですよね。でも、年を重ねると舌の味を感じる機能である「味蕾(みらい)」が減少するため、濃い味付けを好むようになります。

 ですから過剰に制限をかけるのはご法度です。高齢になるほど体に塩分を保持する能力が落ちます。これからの季節は発汗でも失われるので、この状態が続くと低ナトリウム血症を引き起こしてけいれんや意識障害に陥る。糖分も血中のブドウ糖濃度が下がれば頭がぼんやりしてくる。降圧剤を服用しているなら尚更で、運転中にこうした事態が起きれば事故を起こしかねません。

 無理してダイエットに励んでいる人は再考を勧めます。50~60代の方であれば食事制限で動脈硬化のリスクを下げておくことは、その後の人生に有用かもしれません。ただ70代を過ぎると消化機能が落ちて食べる量も減ってはいませんか。

 実は「最も長寿の群」はBMIの値が20~30の人たち。BMI35以上の群でもやせ型より長寿とされています。つまりは小太りくらいの体型の方が長生きしやすいのに、食事量を減らせば、栄養不足となって免疫機能も落ちるでしょう。

 特に肉の摂取量を落とせばタンパク質不足から筋量低下に陥り、転倒して寝たきりのリスクも高まります。高齢者は健康のために無理して野菜中心の食事に変えがちですが、本末転倒になる可能性もあります。

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