同調圧力でマスク着用を続ける日本人 高齢者にリスクとの指摘も…酸素濃度の低い空気が招く病気とは
情報量の違い
なぜ日本人は同調圧力に負けるばかりで、マスク着用のデメリットを考察しないのか。国際政治学者の三浦瑠麗さんはこう述べる。
「マスク社会による被害は、これから顕在化するでしょうが、なぜ認識が遅れたかといえば情報量の違いが指摘できます。感染者、重症者、死亡者の数は毎日報道されますが、コロナ禍での自殺者増加や子供の体力低下などは、1年に1回というほど、調査結果を受けてニュースになるだけで、すぐに忘れ去られます。日数でいえば365対1ですから、勝てるわけがありません。要するに、われわれは情報バイアスに陥っており、結果として見えない被害が進行してしまうのです」
試みに、すでにマスク社会から脱したイギリスの状況を、英国に住む秀明大学の堀井光俊教授に聞いた。
「日本のニュースを見ていると、日本ではマスク着用があまりに定着し、“マスクをするな”と強制されないかぎり外せないように思えます。一方、最初は否定しながらWHOの推奨を受けてマスク着用が義務化され、しないと罰金が科せられる形で着けはじめたのがイギリスです。もとが消極的でしたので義務が撤廃されると、ほとんどの人が着けなくなりました。いまはスーパーマーケットなどでごく少数の人が着けている程度。外で着けている人はいません。当初から日本と一番違ったのは子供への対応で、イギリスは最初から、11歳以下は着用義務なし、中学生も教室では着けないルール。どうせ子供は着けないというあきらめと、教室で着けさせるのは教育上よくないという政府の強い姿勢がありました」
規制を撤廃する際には、
「政府の科学アドバイザーが、私ならこの状況ではこうする、と具体的に示唆していました」
高齢者のお客さんが戻ってこない
科学アドバイザーは「コロナはなくならない。話題にならなくなったときがパンデミックの終わりだ」と言ったそうだ。一方、日本では政治家も専門家も、感染対策が必要なときを除き、なんら示唆しない。その結果、どうなるか。三浦さんが言う。
「外に出る高齢者は現役世代にくらべ、まだまだ割合が少ない。一定数はコロナ禍の運動不足で寝たきりになったり、要介護の度合いが上がったりしたと想像されます。実は、日本経済における高齢者の存在感は大きく、彼らが経済活動を元通りに再開させないかぎり、日本経済は活性化しません。たとえば高齢者が多い寄席などにも、お客さんが戻ってこないという話はよく聞きます。こういう人たちに向けては、マスクを外していい、人と触れ合っていい、というメッセージを、政治家や医師が出していかなければなりません」
そして、こう結ぶ。
「政治家や医師は不誠実だと思います。高齢者に、このままでは寝たきりになると伝えずに自粛を呼びかけて、いまもマスクなどの負の効果については、口をつぐんでしまうのですから」
マスク神話に配慮してしまう岸田総理
コロナの病原性が弱まってからは、マスク社会には感染リスクを超えるリスクがある。だが、同調圧力が強い日本では簡単にはマスクを外せない。これまで世論調査でも、マスクに関して「着用すべき」だと答えた人が多かったが、だからこそ岸田総理は国民に、マスクの弊害を具体的に説明すべきだ。ところが、
「政治家にとって最も大事なのは次の選挙に勝つこと。政治主導を打ち出し、コロナ対策でも規制緩和に積極的だった菅前総理の失敗を、そばでみている岸田さんは、マスクが不要だと思っても、国民の“マスク神話”を慮って、メッセージを発するのに慎重なのです」
と唐木氏。総理がマスクを推奨するのは、高齢者を守るためではなく、自分のためだというわけだ。
和田氏も呆れる。
「弊害はみな、岸田さんが意気地なし、安全宣言を出せないから起きています。7月の参院選が怖くて、世論に迎合しているのでしょうが、選挙後では遅い」
残念ながら、日本は取り返しがつかないことに、あまりに無頓着である。
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