同調圧力でマスク着用を続ける日本人 高齢者にリスクとの指摘も…酸素濃度の低い空気が招く病気とは

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歯科医は「歯肉炎、虫歯の子供が増える」

 みらいクリニックの今井一彰院長は、子供への身体的な影響を懸念する。

「マスクをしていると呼吸が苦しくなり、口の中も乾き、口呼吸が増えてしまいます。すると歯並びが悪くなり、歯肉炎が増え、さらには落ち着きがなくなることにもつながります」

 どういう因果関係か。

「歯は唇を閉じていることで、前方への飛び出しが抑えられています。だから口呼吸で口を開け続けていると、出っ歯になってしまう。また過蓋咬合といい、悪いかみ合わせも増えます。さらに口呼吸では炎症性の物質が増え、それが咽頭扁桃肥大にもつながるといわれます。友人の歯科医たちも、歯肉炎が増える、虫歯のひどい子供が増える、と話しており、そうした弊害は今後、顕在化すると思います。マスクのために鼻呼吸がしにくいことの影響も、無視できません。鼻呼吸には脳を冷やす作用があるのですが、口呼吸になると前頭葉が冷えず、情動的な処理ができなくなって、集中力が失われます」

マスクに依存する子供

 子供にマスクを外すように声をかけてあげるべきだ。そう思う人は多いと思うが、藤井准教授によれば、それは簡単ではないという。

「子供たちもマスク着用が当たり前になって、子供たちに聞くと、外していいと言われても、本当に外していいのか不安になり、外すと悪いことをしている気持ちになるというのです。日本特有の同調意識や、人にどう思われているかを気にする評価懸念が、子供たちの間にも強く働いてしまっているということでしょう。マスクが、いわば“顔パンツ”のようになって、子供たちが知らないうちに依存してしまっています」

 子供のマスク依存が進んでいるなら心配だ。

「多くの子供は親の影響を受けており、親がいいと言えばマスクを外せるという子はいるでしょう。一方で、マスクに依存的になっている子は、親がいいと言っても外せないと思います。いい意味でも、悪い意味でも、マスクが子供にとってメリットになっている場合があり、たとえば、人付き合いや人前に出て話すことが苦手な子にとっては、マスクが必需品のようになっています。その苦手意識を克服するには、場面に応じてマスクを外し、徐々に慣れていくしかありません」

「食事をするのが怖い」という子供も

 公認心理師でキキウェル代表の菊本裕三氏も言う。

「子供がマスクに依存しているケースは多いと思います。マスクをすることで安心感を得て、それが高じると室内でも外さない。自分の表情を家族にも見せたくないということで、そうなるとさすがに危機的だと思います。オンラインのコミュニケーションでもマスクを外さない子が少なくない、という話も聞きます」

 だから、政府が「もうマスクを外してもいい」と言ったところで、

「その号令を受けてマスクをしなくなる若者は、全体の3~4割程度だと思います。理由は同調圧力と、マスクなしではすごせないという気持ちが、半々ではないかと思います」

 と菊本氏。さらには、幼稚園や保育園に通う未就学児について、

「ものごころがついたときから、みんなマスクをしているので、口に対して“グロテスクだ”とか“気持ち悪い”という判断をしてしまっているのです」

 また、先の今井院長も、

「食事をするのが怖い、というお子さんもいる。そういう弊害も出ています」

 と指摘する。事はすでに、マスクを外していいのかどうか、という問いを超えてしまっているのである。

 再び藤井准教授が語る。

「日本にはマスク着用の文化があったので、感染対策のためのマスク生活に抵抗なく移行できた。それだけに学校関係者の間でも、政府が今回のように指針を改めたところで、“すぐにマスクを外すのは難しい”という声が多いのです」

 むろん、それは子供の社会にかぎった話ではない。

「マスクを外していいと言われても、同調圧力のせいで社会はそれに追いつけない。外したい人も、周囲の目が気になって外せず、葛藤してストレスになる。心配な状況です。今後、企業や学校など個別の集団単位で号令をかけていかないと、脱マスクを進めるのは難しいでしょう」(同)

 日本政府は、マスクのメリットとデメリットをともに示し、脱マスク社会への道筋を、諸外国以上に力強く示す必要があるわけだ。

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