防衛費“5兆円増”で自衛隊が購入すべき兵器は? 専門家が「トマホーク」を挙げる理由
“旧式”の戦車
世界各国の陸軍は、常に最新型の戦車を整備しているわけではない。軍事費の問題から、旧式の戦車を改良し“バージョンアップ”させるほうが多い。
「第3世代の90式は非常に設計がしっかりしており、とても完成度の高い戦車です。90式に最新型のネットワーク機能を付け加えるなどの改良を施せば、10式と遜色のない性能になります。問題は予算です」(同・軍事ジャーナリスト)
90式の改良は、10式を新しく製造するより安いのは事実だ。しかし、そこに“財務省の壁”が立ちはだかる。
「兵器の改良・改修の予算は、財務省の理解が得られにくいという問題があるのです。更に、90式を改良すると、意外に高くつく可能性もあります。『ならば、いっそのこと10式を整備しよう』というのが防衛省の本音でしょう」(同・軍事ジャーナリスト)
だが、“バージョンアップ戦略”の場合、スピードが速いという利点がある。
「ロシアの覇権主義を国会議員も有権者も痛感し、防衛費増額の議論が起きたはずです。特に有権者は日本の防衛力を早急に高めてほしいと考えているでしょう。その想いを重視するなら、まずは90式の“バージョンアップ”を優先するほうが、予算の使い方としても効果的ではないでしょうか。有権者の理解も得られやすいはずです」(同・軍事ジャーナリスト)
和製ジャベリンの問題点
軍事に関心の高い人なら、“和製ジャベリン”と呼ばれる01式軽対戦車誘導弾が話題になっていることをご存知だろう。その高性能に関心が集まっている。
ところが、現場の評価は決して高くないという。
「本物のジャベリンは射程が最大で2・5キロあります。かなりの重量があり、高額な照準ユニットは持ち帰らなければなりません。しかし、2人の兵士が運用し、2・5キロの距離を確保しているため、敵戦車を攻撃できるのです。一方、01式誘導弾は射程が1・5キロしかなく、運用は1人です。敵戦車との距離が近く、照準ユニットの回収作業を考えると、命がけの発射と言っても過言ではありません」(同・軍事ジャーナリスト)
ウクライナ軍の場合、距離が近いロシア軍には、NLAWという対戦車ミサイルを使って攻撃するという。
「NLAWの射程距離は最大で800メートルです。その代わり軽量のため持ち運びが楽で、発射器は使い捨てです。つまりNATO軍の戦略は、距離がある敵戦車はジャベリンで狙い撃ちし、接近してきた戦車はNLAWで対抗するという二段構えになっているわけです。01式軽対戦車誘導弾も現場の評価に耳を傾け、射程距離を伸ばしてほしいですね。性能自体は非常に高いそうですから、これではもったいないです」(同・軍事ジャーナリスト)
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