防衛費“5兆円増”で自衛隊が購入すべき兵器は? 専門家が「トマホーク」を挙げる理由
空中給油機の必要性
では、自衛隊が整備すべき兵器を具体的に見てみよう。軍事ジャーナリストが言う。
「最優先なのは空中給油機でしょう。ロシアとウクライナは地続きですから、陸上が主戦場です。一方、日本は四方を海に囲まれています。戦争が起きた場合、様相は全く異なります。ロシアであれ中国であれ、本気で日本を占領しようとするなら、陸戦部隊を海上輸送し、揚陸させる必要があります。防衛する自衛隊にとって、現場空域における航空優勢の確保と維持が、陸海空全ての作戦に不可欠であることは言うまでもありません」
特に尖閣有事が起きた場合、沖縄や本土からの飛行距離が長い。自衛隊機が長距離、長時間の飛行を行うためには、空中給油機の支援が欠かせない。
「もちろん自衛隊も空中給油機の重要性は分かっています。現在はKC−767という給油機を4機、運用しています。これに加えてKC−46Aを4機、一括購入することが決まっています」(同・軍事ジャーナリスト)
ちなみにKC−46Aの購入費は、時事通信の記事によると、4機一括で計1121億円だという(註)。
2024年度までに2機増やすことも決まっている。実現すれば、KC−767が4機、KC−46Aが6機で、合計10機という陣容になるわけだ。
AWACS
「給油機の整備、給油空域への進出、帰投という一連の流れは、複数機でローテーションを組んで実施します。4機に4機が加わった8機体制でも、回すだけでやっとでしょう。やはり10機体制で、初めて現実的な運用が可能となります」(同・軍事ジャーナリスト)
おまけにKC−767は給油システムの都合で、アメリカ海軍と海兵隊の戦闘機、更に2024年度から配備予定となっている航空自衛隊のF−35Bなどに給油ができないという。
「もし防衛費が増額になるのなら、KC−767が給油できない問題を解決し、KC−46Aの導入配備を急ぐことが求められているのではないでしょうか」(同・軍事ジャーナリスト)
先に紹介した時事通信の記事では、自衛隊内で「空中給油機を増やすより、早期警戒管制機(AWACS)を増やすべきではないか」という意見が根強いことを伝えている。
「防衛費が増額になるのであれば、空中給油機も増やし、AWACSも増やすというのが正論でしょう。有事の際、ロシアや中国の陸海軍の動向を正確に把握し、迅速な指示を下す必要があります。2010年時点で自衛隊は4機のAWACSを保有していますが、更に数機が整備されたなら理想的です」(同・軍事ジャーナリスト)
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