肝臓・胆道・膵臓の「難治がん」との賢い闘い方5 ステージIVと言われたらどうすればよいのか?
乳がんの患者さんで
大場:進藤先生の説明に出てきたNENは確かにそうですね。厳密にはがんではないけれど、ふるまいは悪性です。肝臓にパラパラと転移して見つかるケースが多い。原発 (発生の元となる) 臓器としては小腸、大腸、胃などの消化管の場合もありますが、とくに膵臓由来のNENは本当に増えてきている実感があります。アップル創業者のスティーブ・ジョブズ氏も肝転移を有する膵NENが原因で帰らぬ人となってしまったのは有名です。あとは、卵巣がんや腎がんの転移、胃がんの肝転移なども可能性はありそうです。
乳がんの患者さんで、肝臓や肺に一個だけ転移があって、それを標的に一年以上も抗がん剤治療を続けている方をたまに目にしますが、あれも切除してしまってもよいのではないかと。免疫チェックポイント阻害剤の登場や薬物治療の進歩によって転移巣を制御できる割合が高まってきたことで、肝臓や肺にある転移巣の切除意義が再考されてもよいのではと個人的には思います。
進藤:当然のことながら、ステージIVのがんは一番進行したカテゴリーに入るわけですのでよい話ばかりではなく、治療によって根治できる確率で言えばステージIからIIIのがんと比べてかなり低くなります。ステージIVの患者さん全員を治癒に導くことはがんという病気の性質上不可能ですから、いかにしてそれを制御し、元気に長生きできるようサポートしていくのかという考え方は重要です。
切除して見た目が消えればそれで終わりではなく、再発や進行してしまった時の次の一手をどう考えるのか、先の生活で困ることがないようにするにはどうすればよいか、なるべく症状に苛まれることのないようにするにはどういうアプローチが適切かなど、患者さんの人生をサポートしていくのが我々の役割ですから、ステージが進行したがんであるほど、そうした考え方は重要になってくると思います。
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