タクシー会社「100歳会長」が退任で功労金16億円 8億円の赤字に株主は怒らないのか

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 タクシー会社最大手の第一交通産業(本社・北九州市)の創業者で100歳になる黒土始会長が6月に退任、特別功労金として15億9400万円が支払われる。第一交通産業の2022年3月期は、売上が928億円で3期ぶりの増収となり、営業損益は3億円で2期ぶりに黒字に転じた。ところが特別功労金のおかげで、最終的な利益を示す純損益は8億円の赤字になった。株主から怒られないのだろうか。

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 第一交通産業も他のタクシー会社と同様、コロナの影響で経営は決して楽ではない。2021年3月期はグループ全体の連結決算で21億円の赤字を計上している。そんな状況の中で、黒土会長に約16億円の特別功労金を支払うというのだ。

 専門家の解説を紹介する前に、まず黒土氏について説明しよう。黒土氏は大分県中津市出身。大分高等商業学校(現大分大学経済学部)を徴兵のため中退して中国へ。復員後、砂糖の卸売りを経て1960年、38歳の時に小倉市(現北九州市)で後の第一交通産業となるタクシー会社を始めた。

初めて無線機を導入

「タクシー5台から始めたそうですが、画期的だったのは、タクシーに初めて無線機を導入したことでした。これで待ち時間が短縮され、顧客から信頼を勝ち得たわけです」

 と解説するのは、ビジネス評論家の山田修氏。

「さらに、M&A(合併・買収)という戦略的な手法で同業他社を次々に買収して全国的に会社の規模を拡大したことは高く評価されるべきです。これは簡単にできることではありません」

 2000年、福岡証券取引所に上場。2002年、タクシーの保有台数は1万台を突破した。ところが、2009年に成立したタクシー適正化・活性化で減車を余儀なくされ、保有台数は8759台(2021年6月)と減少した。

「それでも大手の日本交通は、タクシー保有は4296台で、業務提携会社は2643台。計6939台ですかから、第一交通がいかに突出しているかがわかります」

 タクシー会社の中で上場しているのは、第一交通産業と大和自動車の2社だけだ。

「株価(5月26日時点)は、第一交通が710円で、大和は818円と大和の方が高いのですが、株主に還元する配当金は、第一交通が年間25円に対し、大和は4円です。株価配当率を見ると、第一交通が5.3%、大和が0.2%と大きく差がでています。創業以来、62年間で日本最大のタクシー会社に成長し、株主への配当もしっかりしています。16億円の功労金を出しても株主から異論は出ないでしょう」

 もっとも、今期3億円の営業利益をあげながら、約16億円の功労金のために赤字になることについては批判的な声もあるようだ。

「今期1年間の決算と功労金を比較するのはナンセンスです。黒土氏が会社にどれだけ貢献してきたか、この一点を評価すれば、約16億円の功労金が妥当な金額であることがわかると思います」

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