〈鬼畜にも劣る悪人…〉県警「捜査報告書」の呆れた中身【袴田事件と世界一の姉】

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「決定が出なくちゃ」

 現在に戻る。5月23日の会見ではひで子さんへの「リモート質疑」が極めて短かったので、翌朝電話した。

「『大いに期待します』とは言いましたけどね。なんといっても裁判は決定が出なくちゃ、その前にああだこうだと言ったって仕方ない。決定が出てみるまではわからんですよ」と話した。相変わらず元気そうな声だ。

 証人尋問の際、法廷で傍聴できる可能性が高いことについて聞くと、「最後に棄却されてしまいましたけど、前の時も東京高裁は最後には私を入れてくれたんです。まあ法廷に入っても黙って聞いているだけでしょうけど。何か聞かれればもちろん答えますけどね」

 事実上の証拠調べは8月初めに終わる。ただ、小川弁護士によると本来の主役である巖さんを裁判官が浜松市に尋ねる「出張尋問」は協議では課題にならず、可能性はなさそう。最高裁が東京高裁に差し戻した際、「宿題」として課したのは、あくまで「5点の衣類の色の変化」の検証だけなので当然かもしれない。とはいえ、筆者がもし裁判官なら審理上、あまり意味がないと思っても巖さんを出張尋問するだろう。これだけのテーマの「主人公」に裁判官は「会ってみたい」とも思わないのか。ひで子さんは「それは裁判官さん、それぞれの考えでしょうから」とあまり意に介さないようだったが。

 2回続けて東京での記者会見には来られなかったことを伺うと「もうコロナはどうってことないけど、歳だからあんまり出歩くなとかって。周囲がああだこうだと言うんですよ。ワハハハ」と電話の向こうで豪快に笑った。ひで子さんによると、巖さんは健康状態もよく、この日、朝6時に起床してしっかりと朝食をとったという。

粟野仁雄(あわの・まさお)
ジャーナリスト。1956年、兵庫県生まれ。大阪大学文学部を卒業。2001年まで共同通信記者。著書に「サハリンに残されて」(三一書房)、「警察の犯罪――鹿児島県警・志布志事件」(ワック)、「検察に、殺される」(ベスト新書)、「ルポ 原発難民」(潮出版社)、「アスベスト禍」(集英社新書)など。

デイリー新潮編集部

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