息子は職員から“虐待”を受け、家に帰りたいと懇願する手紙も…児童相談所に自ら助けを求めた40代シングルマザーの後悔
〈心理的虐待の疑い〉
ところが、東京都児童相談センター(港区児相が発足する2021年4月まで担当)が、遅刻して登校した徹くんを学校で一時保護したあと、沙織さんに送付した通知書には次のように記されていた。
〈母である沙織から児童に対する心理的虐待の疑いにより(中略)一時保護が必要である〉
沙織さんの考えは、児相に息子を一時保護してもらい、その間に、自身の体調を万全にして生活を立て直そうというものだった。母子の間に虐待はないという認識なのである。さらに、担当児童福祉司Y氏の次のような言葉を聞いたことで、児相に対する沙織さんの不信感はいっそう増した。
「こうやって書くしかないんです。僕たちも虐待とは思っていない」
港区児相関係者によると、Y氏は児童福祉司としてキャリアが浅く、沙織さん母子の担当になったのも、深刻な虐待に発展する恐れがないと考えられたためだという。一方の沙織さんは、未熟なY氏の不可解な言動に終始悩まされてきた。
「Yさんは一時保護が決まる前から、児相側の窓口でした。ただ、息子が夜遅くまでゲームをして困っていると訴えているのに、Yさんは息子の前で『遊びたい時間までゲームをしていいよ』と答えてしまう。そのため、息子は『Yさんがゲームをしていいって言った』と、私に反抗するようになったのです。そして、ゲームのやりすぎが息子との関係悪化に繋がりました」(沙織さん)
母親に無断で養子縁組を進める
実は徹くんはこれまで、児童養護施設以外にも、児相の判断で“里親”や、徹くんを認知していない実父のところに一時保護委託されている。その際もY氏は、親権を持つ沙織さんの意向を無視した対応をしてきた。
「Y氏から電話があり『里親さんとの養子縁組を考えなければいけませんね』と言いだしたのです。私が『えっ、どういう意味ですか』と尋ねても理由は答えない。あくまで一時保護なのに、どうして息子を取り上げられようとしているのか。Yさんは、父親との間でも養子縁組を進めようとしたことがある」(同前)
現在、都内の児童養護施設で暮らす徹くん。一時保護の段階から手続きを経て、正式に施設に入所する措置がなされている。冒頭で触れた職員からの乱暴に遭ったあと、穏やかな日常生活を送れているのだろうか。
2022年2月8日、母親である沙織さんのもとに、児相から1枚のファックスが届いた。書面には、徹くんがその前日、37・8度の熱を出して学校を早退したと記されていた。
「児相の話では、息子が暮らす施設の別のフロアで、1週間前にコロナ陽性者が出ていた。息子はその後に発熱したにもかかわらず、耳鼻科に連れていかれ、PCR検査も受けていないということでした」(同前)
その結果、発熱から2日後に徹くんのコロナ感染が発覚。心身の安全をはかるために徹くんは母親から引き離されたにもかかわらず、保護先の施設で、命の危険にさらされていたことになる。
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