一家4人で給付金「9.6億円」詐欺 父親・谷口光弘容疑者が持ちかけた、インドネシア「油田開発」投資話
「三重の石油王」
新型コロナウイルス対策の絡む給付金といえば、山口県阿武町の“4630万円”誤送金事件が記憶に新しい。だが、こちらの被害総額は、約9億6000万円――。このケタ違いの詐欺事件で警視庁に指名手配されているのが、住居不詳の谷口光弘容疑者(47)である。
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警視庁はすでに、三重県在住の谷口の元妻・谷口梨恵容疑者(45)と、長男の大祈容疑者(22)、さらに次男(21)を詐欺容疑で逮捕している。
この“詐欺一家”を中心とする犯行グループは、新型コロナ対策の持続化給付金の不正受給を画策し、同種の事件では過去最大規模の被害をもたらした。セミナーなどを通じて全国から名義人を集め、2020年5~9月の間に約1800件もの虚偽申請を繰り返し、1件につき数十万円近い手数料を得ていた疑いが持たれる。
「手配写真を見て驚きましたよ。彼は、私たちが皮肉を込めて“三重の石油王”と呼んでいた男です。まさか、こんな大規模な詐欺事件に関わっているとは思いませんでした」
そう明かすのは、谷口を知るという会社経営者の男性である。
原油が噴出する動画で投資を募る
「7~8年前に、私の知人がこの男から投資話を持ち掛けられたんです。私も話し合いの場に同席しましたが、真夏なのに小ぎれいなジャケットを羽織ってビジネスマン然とした印象でしたね。今回の手配写真も見ましたけど、当時の彼はもっと柔和なイメージです。ただ、持ち込んできたインドネシアの投資話がどうにも胡散臭かった……」
谷口は一昨年10月にインドネシアに出国したとされ、警視庁は指名手配してその行方を追っている。高飛び先とされる“インドネシア”には以前から縁があったようだ。
この男性が谷口と会ったのは関東近県の喫茶店。その場で谷口が差し出した名刺には、彼の関係先の会社名と、三重県内の住所が記されていたという。
「彼は持参したノートパソコンを開くと、ひとつの動画を見せてきました。そこには地面から原油が噴水のように湧き出している様子が映し出され、その周囲で子どもたちが歓声を上げて大はしゃぎしていた。彼はこう続けました。“インドネシアのバリ島で有望な油田が見つかったんです。なるべく早く採掘のためのインフラとパイプラインを建造する必要があります。すでにアメリカの企業に資材を発注済みですが、その支払いのために2億円ほど融資をお願いできないでしょうか”。その後、実際に英語で書かれた契約書も見せられました」
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