「東アジアのトルコ」になりたい韓国、「獅子身中の虫」作戦で中国におべっか
あとは韓国にムチを入れるだけ
――この作戦で中国は韓国への怒りを収めたのでしょうか。
鈴置:怒りは簡単に収まらないでしょうが、中国は「だったらちゃんと約束を守れよ」と言い渡しました。Global Timesの「China, South Korea to embrace larger devt; hope Seoul ‘does what it says’: ambassador」(5月26日)です。
・South Korea stressed that it will join the IPEF based on principles of openness, transparency and inclusiveness, and we hopes it could do what it says, Xing noted.
尹錫悦大統領の参加表明発言を引用し「開放性・包容性・透明性の原則に基づいてIPEFを推進する」と約束した以上、それが実行されることを望む、と念を押したのです。
中国はIPEFを有名無実化するための足場たる「韓国」を確保した。あとは韓国にムチを入れ、約束を実行させることになります。
――韓国はそんなにせこい手を使うぐらいなら、IPEFに入らなければよかった……。
鈴置:韓国の半導体産業は米国の設計技術と米日の製造装置・素材なしでは立ち行きません。加入しなければ、米国から「中国側の国」扱いされ、「いざ」という時に供給を締め上げられるのは確実です。
IPEF加入に当たり、それも中国を説得する言い訳にした模様です。先に引用した「GT Voice: S.Korea can’t allow chip sector to be hijacked by US geopolitics」(5月18日)に、以下のくだりがあります。
半導体でも米中板挟み
・the seemingly strong industry relies heavily on the Japanese supplies of upstream raw materials, and key parts of the industrial chains are subject to the US technology patent control.
・If South Korea succumbs to the threats or control of the US and Japan to its semiconductor industry, it will be harmful to its industrial momentum, putting its supply chains at a disadvantage in the long run.
日米に屈すれば、韓国の半導体産業は勢いを失う――。韓国は外交だけでなく、半導体産業でも米中の間で板挟みになっているのです。ここでも表面的には同盟国である米国に従うフリをしつつ、裏では中国に通じる――という手を使うしかないのです。
日米豪印の枠組み「Quad」に関しても、韓国では「獅子身中の虫作戦」が語られています(「早くも米日とすれ違う尹錫悦外交 未だに李朝の世界観に生きる韓国人の勘違い」参照)。
国防研究院の金斗昇(キム・ドゥスン)責任研究委員はQuadに入ることで、その反中的性格を日本と共に内側から弱めて行こうとはっきり提言しています。「韓国新政権出帆に対する日本の認識と政策的含意」(4月22日、韓国語)です。
韓国はトルコに似ています。トルコは、フィンランドとスエーデンがNATO(北大西洋条約機構)加盟を希望すると難色を示しました。既存の加盟国の全会一致が必要条件ですから、トルコが決定権を握った形です。
「クルド人テロリストを両国が匿っているから」との名分を掲げていますが、NATO拡大の阻止に動くことでロシアにいい顔をしたい、というのがトルコの本音でしょう。自由と民主主義を守る「NATO」のメンバーであることを利用して、圧政のロシアを助ける――。まさに獅子身中の虫です。
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