【日大事件】新リーダーを決める「学長選挙」を控え、田中前理事長との決別と疑惑解明なるか

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「見事」な報告書

 3月31日、大学宛てに提出された第三者委員会の調査報告書(正式には「元理事及び前理事長による不正事案に係る第三者委員会」による「元理事及ぶ前理事長による不正事案に係る調査報告書」)は、A4で226ページにもおよぶ膨大な労作だ。事細かに、事実が追及され、独裁的な体制に至った経緯、事件のあらましも克明に記されている。

 さすがに、偏差値が高く、勉強ができたのだろうと脱帽させられる弁護士さん3名を中心とする見事な報告書だ。が、惜しむらくは、「事実」を客観的に記す基本を守ったためでもあろうが、血の通った感じが足りない。元理事や前理事長は、どうしてこのような仕組みを作り、第三者から見れば不正だとすぐ理解できることを正義だと信じて突き進んでしまったのか。その背景は浮かび上がって来ない。

 最も大切なことはまったく明らかにならないまま、日大問題は終結してしまいそうで、言葉を失う。他の社会問題と同様に、社会の病理、権力の腐敗構造が放置されるバランス感覚が、いまの日本の現実なのだろうか。

小林信也(こばやし・のぶや)
1956年新潟県長岡市生まれ。高校まで野球部で投手。慶應大学法学部卒。大学ではフリスビーに熱中し、日本代表として世界選手権出場。ディスクゴルフ日本選手権優勝。「ナンバー」編集部等を経て独立。『高校野球が危ない!』『長嶋茂雄 永遠伝説』など著書多数。

デイリー新潮編集部

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