日テレもフジも社長がたった1年で交代 対照的な新社長から見えてくる経営戦略の違い

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 日本テレビとフジテレビから発表された社長人事が業界で話題になっている。日テレの新社長には石澤顕氏(65)、フジの新社長には港浩一氏(70)が内定したのだ。両社の現社長は昨年就任したばかりだった。通常、少なくとも2年は務めるのに、わずか1年での電撃交代劇。とはいえ、新社長を見てみると、日テレとフジの経営戦略の違いが浮き彫りになるという。

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 日テレの石澤氏は80年に東京大学文学部を卒業し、日テレに入社。報道局政治部長やメディア戦略局メディア事業部長、編成局長を務め、13年に取締役、18年に専務となり、21年から日本テレビホールディングスの上席執行役員(経営戦略、ICT、広報・コンプライアンス担当)を務めていた。今回は繰り上げ人事と言っていい。

 対して、フジの港氏を知る人は少なくないだろう。「とんねるずのみなさんのおかげでした」などで木梨憲武が演じた“小港さん”のモデルである。76年に早稲田大学第一文学部を卒業してフジに入社。当初こそ人事部だったが、その後はバラエティ畑一筋で、「オールナイトフジ」やとんねるずの番組などを担当。15年に子会社の共同テレビ社長に就任した。今回はいわば呼び戻された形だ。

 2人とも正式な就任は6月になるが、全くキャラの異なる新社長と言っていいだろう。民放幹部は言う。

「日テレの現社長である杉山美邦氏(67)は生え抜きではなく、読売新聞からの出向組でした。その前の小杉善信氏(68)が生え抜きで、バラエティからドラマまで番組制作の経験も十分にあったのに比べ、杉山氏は現場のことを全く知らなかった。そのため社員のモチベーションはもちろん、視聴率まで下がってしまったそうです。このままではマズいということで、急遽抜擢されたのが石澤氏だそうです」

バラエティ制作が衰退したフジ

 フジの現社長・金光修氏(67)は西武百貨店からの中途入社だが、編成担当として「カノッサの屈辱」「料理の鉄人」「カルトQ」などを手がけたテレビマンだ。

「金光氏の前任の遠藤龍之介氏(65)、その前の宮内正喜氏(78)も、いわゆる情報系、『めざましテレビ』や『とくダネ!』を手がけてきたテレビマンでした。情報系出身の社長の場合、週1回の番組よりも平日帯の情報番組を重視する傾向が強くなります。その結果、バラエティ番組の人材が冷遇され、ヒット作を量産した人材も他部署に異動させられたりしました。“楽しくなければテレビじゃない”を合い言葉に、バラエティ番組でのし上がったフジですが、バラエティの制作力が低下し、衰退していきました。この状況を何とかすべく社長に就任したのが金光氏でした。しかし、彼は編成部門のキャリアはあっても、バラエティ番組などの現場経験は少なく、成果が出せなかったのです。そこで白羽の矢が立ったのが、バラエティの港氏というわけです」

 2人とも現状を打破するべく社長となるのだが、方向性は異なるという。

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