46歳「高学歴風俗嬢」が苦しむ逆差別 ハードワークの日々で求める“癒し”と“夢”

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癒しを求める先は…

 そんな生活のなか、紘子がいまハマっているものがある。女風、女性用風俗だ。「男を買う」のである。出張ホスト、レンタル彼氏、とも呼ばれるジャンルで、サービス内容は様々。中には性的な「ラブマッサージ」を売りにしている店もある。紘子が利用するのもそういった店だ。

 彼女は一年ほど前からある全国展開している大手グループを利用しているそうだ。お気に入りの男性は、“バンギャ”の紘子らしい、 L'Arc~en~CielのHYDE似のイケメンだ。初回で200分という長いコースを予約したのは、風俗経験者ならではの“配慮”といえるだろう。男でも女でも、稼ぎの良い長時間利用の客には、喜んでサービスするからだ。

「実際に会ってみて、もう写真以上のイケメンで、もうそこでドハマりしましたね。顔もそうですけど、体も綺麗に、適度に鍛えられてて。そのイケメンが私を……」

 目を細め、満面の顔でうっとりと話をする。夜の仕事でタイプの男性と会うのは稀である。どんな女だって自分の好みの相手と体を重ねたいし、愛されたい。多くの売る女たちはホストクラブにハマるが、紘子はホストではなかった。

「ホストってコスパ悪いじゃないですか。シャンパンタワーで100万円使ってもセックスできるかどうか分からない。そんなものに大金を注ぎ込むほど私は若くないので。その点、女風は確実。実は昨日も彼に会ってきたんです。もう彼しか買いません。来月は彼のバースデーがあるので、その日は買い取っちゃう気でいます。彼はBARの店員もしていて、いずれは自分の店を持ちたいって言ってるんです。その力添えができたらと思っています。その為には仕事、頑張らないと! って気力が溢れます。それがあるだけで随分、精神安定剤になってますね」

 父親に預けているという息子を「彼」に重ねている部分もあるのでは、と聞くと、

「もう成人していますが、小学生の時に『ママの人生だから、頑張ってね』って言われたんです。もう申し訳なくて……仕方なくて。酒井さんがおっしゃるように彼を買うのは『子供をきちんと育てられなかった自分の懺悔』かもしれません。実は彼、孤児院育ちなんです。だから私が愛を教えてあげたい、子供にできなかったことを彼にしてあげたいんです」

 風俗は50歳までと言った。その後にはこんな目標があるそうだ。

「東京大学を受験しようと、いま勉強してるんです。『公認心理士』になりたくて。修士の資格をとろうと。どうせだったら、って。風俗嬢の、現場を知ってるカウンセラーになって、少しでも私のように悩んでる女性を救いたいんです。あとはアダルト女優じゃない方の女優にもなってみたいし。あ、私、AV単体で10本ぐらい出てるんです。ギャラは一本6~8万円で1日拘束の3カラミとかですね。あとは詩集も出版したいですね」

 その前向きな姿勢は羨ましい。

―――――

 取材を終えた数日後、紘子からまたこんなメッセージが来た。

〈女風の担当者(※例の「彼」のこと)が既婚者の可能性が高いことがわかり、心が折れています。お金で愛が買えないと分かっていましたが、女風という非日常で癒されても、現実で癒される訳ではないので、心の闇がより深くなりました 泣〉

酒井あゆみ(さかい・あゆみ)
福島県生まれ。上京後、18歳で夜の世界に入り、様々な業種を経験。23歳で引退し、作家に。近著に『東京女子サバイバル・ライフ 大不況を生き延びる女たち』ほか、主な著作に『売る男、買う女』『東電OL禁断の25時』など。Twitter: @muchiuna

デイリー新潮編集部

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