転職準備は40代で始めないと手遅れ 「70歳定年延長法」が加速させる大リストラ

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一理ある「45歳定年」

 私は、ソニーの創業者の一人、井深大(まさる)さんとも仕事をしましたが、ああいうスーパーマンみたいに仕事ができるビジネスパーソンというのはほんのひと握り。ほとんどの人は、年を取ったら会社から「長居してほしくない」と思われる人材です。

 ですから、多くの企業には、一定の年齢になれば部長や課長といった役職から退くシステムである「役職定年」や、「減給制度」があるわけで、それがイヤなら「早期退職」を受け入れるしかない。

「70歳定年延長」はシニアを追い出すことに拍車をかけるだけでしょう。もう終身雇用の時代ではないのです。厳しい世界だと思うかもしれませんが、それが現実です。

 昨年、サントリーホールディングスの新浪剛史社長が「45歳定年」を発言して、一部でひんしゅくを買ったのは記憶に新しいところです。しかし、私はこの「45歳定年」には、一理あると思っています。

40代のうちにジョブチェンジ

 おそらく新浪氏の頭にあったのは、「45歳で会社を辞めるべきだ」という主張ではなく、「人は45歳前後で生物学的な曲がり角を迎える」という客観的な事実です。人は年を取ると、気力も体力も衰えます。それを最初に感じるのが40代半ば。若い時のようにバリバリ働けなくなります。目は疲れ、視力は低下する。集中力も落ち、ちょっとした判断が鈍る。ビジネスのセンスも若い人には敵わなくなる。

「培ってきた経験があるじゃないか」と自分を奮い立たせても、日々進化するビジネスのスキームについていくのがやっと。どんな人も加齢には勝てない。

 突飛な例に思うかもしれませんが、イチローが45歳で引退したのは、ある意味、象徴的な出来事だったように思います。ビジネスとプロスポーツでは世界がまったく違いますが、ビジネスの面でも45歳前後になると、新しいことに対応するのが難しくなっていくのです。

 世間ではいま、さかんにDX(デジタルトランスフォーメーション)が叫ばれていますが、年を取ってくると新しいことに対応するのに若い人の何倍も時間がかかる。同じ畑にいては若い人に敵わなくなるのです。

 理想的なのは、ちょうどイチローが45歳で第一線を退いて、その後は後進の指導に当たったりしているように、40代のうちにジョブチェンジをすることでしょう。

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