転職準備は40代で始めないと手遅れ 「70歳定年延長法」が加速させる大リストラ

ビジネス

  • ブックマーク

アメリカには「定年」はない

 そもそも「定年」とは何でしょうか。

 実は欧米の多くの国では、年齢でリタイアを迫る定年制度は“違法”とされます。男女の性別で求人募集するのが違法であるのと同じく、国籍や年齢によって採用・不採用を決めるのはアメリカやイギリスでは差別にあたるからです。実際、私の経験でも、アメリカにいたときは、同僚や部下の年齢を気にしたことはありませんでした。アメリカでは「定年」は自分で定めるのです。

 ところが日本は一定の年齢が来ると、自動的に退職を迫られる。これは、年齢で人を判断する非常に日本的なシステムです。能力のいかんにかかわらず、年齢だけでスパッと区切る。戦後の高度経済成長期にはそれでもよかったのだと思います。企業にも体力があって、当時は55歳で定年退職する人たちの肩を叩いて「おつかれさまでした」と数千万円の退職金をポンと払えた。そうやって私の先輩たちは悠々自適な老後を過ごすことができた。会社もシニア層を送り出した後に、次から次へと若い人たちを雇い入れることで、うまい具合に新陳代謝できたんです。年功序列型の賃金体系でもうまくいっていた。しかし、状況は変わりました。

今の日本は「最悪の状態」

 いまは「人生100年時代」といわれて、高齢者がどんどん増えています。その一方で子どもは増えない。急激な少子高齢化によって、2025年には生産年齢人口(15歳から64歳の人口)のほぼ2人で1人の高齢者を支えることになると推計されています。ちなみに1950年には約12人で1人の高齢者を支えればよかったわけで、社会の構成がいまとはまるで違う。ですから、そういう時代に設計された年金や医療といった社会保障が、いまの時代にうまくフィットして機能するわけがない。

 そのうえ、日本の経済は30年以上にわたって低成長を続けてきました。老後に2千万円必要だと言われても、すでに国力は低下していて、高齢者の生活を手助けする潤沢な公的年金も設定できなくなっているのです。そして、さらにコロナが追い討ちをかける最悪の状態になっています。

次ページ:民間はもっとシビア

前へ 1 2 3 4 5 次へ

[3/7ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。