転職準備は40代で始めないと手遅れ 「70歳定年延長法」が加速させる大リストラ

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 黒字でも早期退職者を募る企業が増えている。政府が「70歳まで定年を延ばす」と言い出したことで、給料の高いシニアには早く辞めてもらいたいという企業の本音をあぶりだすことになった。では、中高年は辞めて仕事があるのか。『定年格差』の著者が明かす真実。

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 コロナ禍で「以前とは働き方が変わった」という人が多いと思います。在宅勤務やリモートワークで働きやすくなった人がいる一方、労働環境が自分の望まぬ方向へガラリと変わってしまった人もいるでしょう。

 たとえば会社の倒産による転職。もしくは業績不振によるリストラ。とくに中小企業は、コロナ禍によって打撃を被った不運なケースも多々あるはずです。しかし、いま上場企業でも増えているのが、会社側の都合で早期退職を迫る、いわゆる“黒字リストラ”です。昨年は「日本たばこ産業(JT)」や「本田技研工業」「パナソニック」などの大手が、大規模な早期退職者募集に踏み切りました。

 会社の業績は黒字なのに、なぜ大規模なリストラが敢行されるのか。その原因は何か。私は、昨年4月に改正された「高年齢者雇用安定法」が大きな要因のひとつだと考えています。奇異に思われるかもしれませんが、シニア層の雇用を守るための法律が、全世代のサラリーマンに悪影響を及ぼしているのです。

70歳定年時代がスタート

 今回の法改正により、すべての企業は70歳までの継続雇用が努力義務とされました。あくまでも“努力義務”とされてはいるものの、企業は「70歳までの定年引き上げ」か、自社で雇用せずとも「70歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)」などを講じなければならなくなったのです。つまり、政府主導の「70歳定年時代」が始まったといえるでしょう。

 もちろん、猛烈な勢いで少子高齢化が進む日本の状況を俯瞰すれば、「元気なシニアには働いてもらって、国を支えてもらう」という考えは正しいように思えます。私自身、現在、87歳になる後期高齢者ですが、いまでも毎日1時間半かけて出勤しています。元気な高齢者はどんどん働いて、社会の役に立つべきで、少しでも税金を納めたほうがいいと考えています。

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