亡くなる20日前の尾崎豊、前髪カット中の渡辺美里、デビュー間もないドリカム……名写真家が振り返る「J-POP黄金時代」
ネット配信が主流となった日本の音楽産業
今や音楽の聴取環境はネット配信が主流。一部ではレコードの人気が復活し、カセットテープ愛好家が増えている、という話も聞かれるが、どちらかといえば少数派だろう。しばらくタワレコに行っていないなあ……なんて音楽ファンも多いのではないか。
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【写真】亡くなるわずか20日前に撮影された、尾崎豊(当時26)のポートレート
しかし時代が移り変わっても、80年代、90年代の音色はいまなお色あせない。平成生まれの若者たちの間でも、昭和歌謡や往年のJ-POPがブームになっているそう。若手のアーティストによるカバー曲も続々と発表されている。
配信では味わいづらくなったのは、アルバムを通して聴くという楽しみ方、そしてアルバムジャケットそのものの魅力かもしれない。
かつて「名盤」には「名ジャケット」がつきものだった。強い思い入れを抱く人が多いために、自然とジャケットもまた多くの人の記憶に鮮烈に残ったという面もあるだろう。
お気に入りの歌手、バンドのアルバムジャケットはすぐに頭に浮かべることができる、という方は多いはず。そのため、レコードからCDに移行していく際に、「ジャケットが小さくなる」と寂しさを語る人が少なからず存在した。
配信の時代になると、さらにそれが小さくなってしまったのは言うまでもない。
当時はジャケットに限らず、情報が少ない分、アーティスト写真そのものがファンにとっては何よりも嬉しいものだった。いつでも好きな「動画」を見られるような環境ではなかったからだ。
多くのレコードジャケットや音楽雑誌に携わったカメラマンの軌跡
今よりもはるかに「アルバムジャケット」やアーティスト写真が大きな存在だった――そんな80年代、90年代の日本の音楽シーンの輝きを再確認できるのが、5月上旬まで銀座で開かれていた「大川直人写真展 GOOD TIME MUSIC 音楽の仕事40年の軌跡」だ。
大川氏は1957年東京都生まれ。82年、フリーカメラマンとなり、レコードジャケットや音楽雑誌の仕事に携わってきた。大川氏がジャケット写真を手掛けたアルバムをざっと並べてみよう。
「Pleasure」大江千里、「早熟」岡村靖幸、「eyes」渡辺美里、「3rd. BREAK」 BARBEE BOYS、「Self Control」TM NETWORK、「野球選手が夢だった」KAN等々。
今回の写真展では、安室奈美恵、桑田佳祐、米米CLUBらアーティストの写真が90点以上展示されている。
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