岸田総理、就任後初のロングインタビュー 櫻井よしこが斬り込む「改憲」「核」「中国」
日本が抱える二つの問題
櫻井 周辺国とのバランスはすでに崩れていますし、二つの問題があります。一つは、自衛隊の力は必要最小限であって、戦力でないから違憲ではないとの屁理屈を、私たちはいつまで持ち続けるのか。もう一つは、国際社会が日本の方針を理解しても、ロシアや中国のような、他国や他民族への攻撃的なやり方に直面したら、それが日本を守ることにつながらないという点です。ロシアに抗してドイツのショルツ首相が軍備増強に大きく方針転換した今、日本も変わるべき時ではないですか。
岸田 そういう議論は当然出てくると思います。日本を侵略しようとする国は、我が国がどんな姿勢を示しても絶対に理解しようとしないでしょう。一方で、日本は共に侵略に対抗してくれる国とも平素から信頼関係を作っておかなければなりません。我が国の基本的な安全保障の姿勢が評価されているなら維持しておく。国際社会と連携し、トータルで日本を守るという考え方を作っていきたい。
アメリカの核の拡大抑止だけで十分なのか
櫻井 トータルだけでは守れない。日本が専守防衛の考え方から脱却する時です。もう一点、先の自民党の提言では、核についてほとんど論じられていません。総理は広島のご出身で「非核三原則」を尊び、核のない世界を理想とされている。私もそれが実現すれば、どれほどよいかと思います。けれど、今回のウクライナ問題では、ひょっとしてアメリカの“核の傘”は開かないんじゃないかと、多くの人が危惧を抱いたのも事実です。核なき世界の理想に到達するまでの間に、ロシアや北朝鮮、中国のような国が核を片手に「台湾に手を出すな」とか「尖閣に手を出すな」と言ったら、アメリカの核の拡大抑止だけで十分なのかといった議論はすべきではないですか。
岸田 ウクライナ情勢における核の問題を巡っては、すでにさまざまな議論が起こっています。私が申し上げているのは、岸田内閣においては「非核三原則」はしっかり堅持させていただくということ。核という非人道的な特殊兵器を、先人たちは何とかコントロールしようと知恵を絞り枠組みを構築してきました。それが不十分との批判は承知していますが、この枠組みを維持しているからこそ、日本はロシアや北朝鮮を非難できる。この枠組みを外して本当に国民の安心安全につながるのか。そういった議論を併せてやる必要があります。
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