部下からの相談に「仕方ないな」で有罪判決 会社員が“犯罪人”になる最高裁判決の注目ポイント

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仕方ないなの一言で……

 さらに、今回の裁判では、実際に贈賄工作を主導した社員だけでなく、それを監督する取締役が起訴されたところが、もうひとつのポイントだ。内田氏は、部下から贈賄の相談を受けた際、“仕方ないな”と呟いたとされた。裁判所は、このひと言を聞いた部下が、“内田氏が贈賄を許容した”と理解してもおかしくないと判断したわけである。

「取締役は、贈賄などの違法行為の相談を部下から受けた場合、反対の意思表示をして、部下の“暴走”を思いとどまらせることが出来る地位と権限を有しています。にもかかわらず、態度を明確にせず曖昧な返事をしたことで、贈賄工作に加担したとみなされ、共謀共同正犯だと認定されたのです」

 とはいえ、取締役が、部下の業務全てを把握できるわけではない。

「今回の最高裁判決が判例として残ることで、今後同じような構図の場合に、取締役が罪に問われる可能性があることになったとも言えます。よく監督責任といいますが、形だけではなく、本当に厳密に監督して、違法行為については明確にノーと言わないと“犯罪人″になってしまうおそれがあるということ。迂闊に取締役になったら、大変です。部下が、違法性があると理解しつつ、上司に報告し、口頭で応じただけだとしても、共犯者となり得るわけですから。最近では、SMBC日興証券の副社長が、部下らと共に相場操縦の疑いで東京地検特捜部に逮捕されていますが、本人は取り調べに対して、『報告は受けていたが、違法という認識はなかった』と言っています。今後の裁判では、副社長が具体的にどのような関わり方をしていたかが焦点になると思いますが、部下からの報告に対して明確な態度を取らない限り“身を守れない”こともあるという、極めて厳しいコンプライアンスが要求される時代になりつつあると思います」

「仕方ないな」という一言が、うっかりと口を滑らしたでは済まない致命的な判断ミスとなった――。

デイリー新潮編集部

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